生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

①ミュニシパリズム(トランスナショナル研究所研究員 岸本聡子)

季刊『社会運動』2022年1月発行【445号】特集:代理人運動と生活クラブ―民主主義を終わらせない

地域の主権を大切にする運動、ミュニシパリズムが世界各地で広がる
「ミュニシパリズム」という聞きなれない言葉を紹介し始めて、数年が経つ。ミュニシパリズムは、各地各国で多様性があるし、現在進行形で日々進化・深化しているので表現が難しいが、それでも私が社会運動の中で見たり、学んできたことを共有したい。
ミュニシパリズムは地域の主権を大切にする新しい政治運動だ。アルゼンチン、スペイン、イタリアなどから広がり、フランス、東欧でも勢いをつけている。イギリスやアメリカではミュニシパリズムよりも「ミュニシパル・ソーシャリズム」という言葉が使われることが多いようだ。文字通り地方自治体主導のソーシャリズムで、1800年代後半に個人の手中にあったガス、水道、下水などのインフラを公衆衛生向上のために自治体の管理下にした実践と運動がそのルーツ。現在に至る自治体の公共サービスの基盤を作った。日本語では「都市社会主義」と言われる。
その後1980年代からは新自由主義が強化され、深化した今に至る40年となる。最後の砦の公的な分野、例えば医療、教育、上下水道、電力、介護、保育、公園や図書館、ゴミ回収などの自治体サービスが、さまざまな形の民営化の波に侵食されてきた。その反動で、ヨーロッパを中心に再公営化運動、つまり一度民営化されたりアウトソースされたサービスを、公的な管理とオペレーションに戻すことが起きている。100年以上前の公営化運動と精神は共通で、住民の生命と健康を守り、福祉を向上させることだ。公共サービスの再公営化はミュニシパリズムの具体的な行動の一つであるが、もちろんそれだけではない。この原稿では、地域から積極的な民主主義と政治の性質そのものの根源的な変革を志向する、今の時代のミュニシパリズムに迫る。

(p.9-P.12 記事抜粋)

 

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