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市民セクター政策機構

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政権交代のない国で起きている恐ろしい光景
(季刊『社会運動』編集長 白井和宏)

【発売中】季刊『社会運動』2022年7月発行【447号】特集:地方議会を市民の手に! -岐路に立つ地方自治

総貧困化社会 国民は政府のATM

 

 日本の生活は本当に貧しくなった。「一億総中流社会」後のバブル景気が崩壊したのは1993年。この年を境にして、専業主婦世帯と兼業主婦世帯の割合が逆転し、合計特殊出生率が1・5を切った。この頃から、パート労働が一般化し、さらに少子化が進んで、いまでは「総貧困化社会」と言われるようになった。  この数十年間、他の先進国の賃金は大きく上昇したが、日本は逆に数パーセントも減少。年収も韓国が日本を上回るようになった。  「医療、介護、少子化」に使われるはずだった消費税は10パーセントに上がったが、法人税が引き下げられてその減収分の穴埋めに使われた。結局、医療、介護、年金などの社会保険の負担率も上がり、税負担と合わせた国民負担率は48パーセントになった。「日本国民はまるで政府のATM。給料の半分近くを税金と社会保険料でむしりとり、30年の失政のツケを私たちに払わせている」のだ(注1)。

 

日本は民主主義国ではない 国家主権に向かう「後退国」日本

 

 政権交代のないこの国では、税金の使い途さえ問われなくなった。「アベノマスク」の生産・保管・送料や桜を見る会、不明なコロナ予備費11兆円の使途、オリンピックの赤字補填、マイナンバーカードのポイント付与など、どこまでも闇が続く。しかし政権批判どころか国会報道さえ行わないNHK・マスコミ(注2)のおかげで、与党は不祥事を追及されない。  自民党の改憲草案は、現在の国民主権から戦前の国家主権に戻すことを目標としている。2012年には「国民の生活が大事なんて政治は間違っている」と自民党の閣僚が明言した。元首相と世襲議員たちは、国会も政府も検察も日本銀行でさえも、自分たちの支配下にあると発言している。「防衛費を2倍に引き上げよう」と声高に主張する一方、貯蓄すらままならない国民に「投資による資産所得倍増プラン」を勧めている。まるでマリー・アントワネットに「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」と言われているようだ。  政権交代のない国で、国民生活に関心のない世襲議員に権力を独占させてきた結果、私たちは恐ろしい光景を目の当たりにしている。

(注1) 鈴木傾城氏 https://www.mag2.com/p/money/1189199

(注2) 「報道の自由度 国際ランキング」は2021年67位まで下がった(2010年は11位)。

(P.4-P.7 記事全文)

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