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市民セクター政策機構

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果たして議会は二元代表制の一翼を担えているだろうか

 

吉川市議会議員/埼玉県市民ネットワーク共同代表 岩田京子

 

 辻陽著『日本の地方議会』は、最も身近な地方議会に焦点を当て、現場の議会や議員を丁寧に取材の上、自治体規模や報酬の違いなどを比較し、選挙や議会・議員さらには議会事務局のあり方、またそれらの問題点等を指摘している。
 議員が読めば共感の嵐に、議員になる前に読めば、地方議会・議員の生態がわかる。そして、政治を選ぶ市民が読めば、地方議会の役割や議員に求めるべきことが改めて見えてくる。果たして議会は二元代表制の一翼を担えているのだろうか。
 我が町・吉川市では、2015年に初の無党派市長が誕生し、翌年の市議会議員選挙でも新風を追い風に20名中9名の市民派議員、7名の女性議員が誕生。私もそこで初当選し、市長与党でスタートした。今は野党だが、当時を振り返ると情報量、職員の対応、答弁、出してもらえる資料等々が優遇されていた代わりに「議案に質問をするのはバカ者」であった。なぜなら、答弁準備に職員の時間が割かれるからだ。与党・野党を経験した私がずっと突き付けられているのが「議会の存在意義」と「市長の絶大なる権限」についてだ。
 本書の前半はまさにそのことがテーマになっている。辻氏は議会の存在意義は政治的ねじれ状態において発揮されやすいという。確かに私が野党になって、市長と議会が拮抗状態になってからの4年間に全国で0・2パーセント(市議会議長会の調べ)しか行われていない「予算修正」を2回も行った。
 また、埼玉県議会が「ケアラー支援条例」はじめ数々の条例を議員提案で作っているのも、拮抗状態の賜物だろう。このように対抗型議会の方が、市長に物言わぬ追従型の議会より議会の役割は果たせる。しかし悲しいかな、辻氏が述べるように「議会にいじめられている可哀想な市長」と議会を悪者に印象づけるのは容易い。議会は住民のために、絶大なる首長の権力の暴走を止めるという役目を果たしたというのに。
 辻氏はこのような二元代表制における議会の機能強化のため、議会に携わる側からの改革を「内からの改革」と表現する。「情報公開」「住民参加」「議会基本条例等の制定」3つの視点の重要性を説く。一方「外からの改革」は選挙制度や政党の役割、議会の政策形成機能等を重要視する。有権者がもっと容易に「政策」で候補者を選べるようにすることが目的だ。議員の専門職化が求められるが、その実現には「専業するための報酬」「定数」「成り手」など様々課題があり、自治体の人口規模・財政規模に大きく左右される。報酬も少なく専業が約2割、なり手のいない町村議会議員では、専業が約2割、無投票当選者が約4分の1だというから嘆かわしい。

 

結局、政治は有権者の手にかかっている

 

 さて来年は統一地方選だ。地方の活動量は国内総生産の11パーセントに達しているという。国に義務付けられたものが多くを占めるものの、国の4パーセントと比較すると非常に大きい。その使い方に無関心なんて勿体ないことだ。
 最後に自慢話で恐縮だが、我が町の住民が凄いのは、自民党5名、公明党3名、共産党3名、市民派9名(会派は4・3・1・1)と絶妙なバランスを保って議員を議会へ送り出していることだ。これは、どこかの会派の思い通りにはならず、常に合意形成が求められ、民主主義が正当に働く大切な要素になっている。女性が増えると、もはや「女性」も売りにならない。こうなって初めて「何を目指しているか」が意味を成す。
 結局、政治は有権者の手にかかっている。住民の力以上の議会にはなり得ないのだ。本書を身近な地方議会について改めて考えるための一冊に! そして選挙に行こう! いや、折角なら一歩踏み込んで「選挙に出よう!」「選挙をしよう!」。

(P.52-P.53 記事全文)

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