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市民セクター政策機構

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原発推進派による論点のすり替え、ごまかしを明らかにする
(龍谷大学政策学部教授 大島堅一)

【好評発売中】季刊『社会運動』2023年4月発行【450号】特集:原発ゾンビ ―再稼働なんてありえない

日本の原子力産業は、縮減・衰退している

 

―企業も若い人材も原子力産業から離れています。

 

 東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故(以下、福島原発事故)の前は54基の原子力発電所が稼働し、全電力の30%を供給していました。事故後は、それがいったんゼロになり、21基が廃止(事故以前に廃止が決まっていた3基を合わせると24基が廃止)。事故後10年で、10基が再稼働したという状況です。ただし、常に10基すべてが動いているわけではありません。
 全電力量に占める原子力の発電量の割合は、2021年で6%台、20年は4%台にまで低下していました。原発の電力市場規模は1998年の32%に対し5分の1、発電量は5分の1から7分の1くらいになっているのが現状です。
 原発産業の斜陽化は福島原発事故以前から始まっており、いまや終焉を迎えています。福島原発事故の後は、安全対策や事故処理があったため、何とか産業が維持されてきましたが、再稼働への安全対策が一段落したいま、いよいよ仕事がなくなってきました。残る原発は26基、このうち再稼働をしたとしても数基。原子力産業そのものが、維持できるかどうかの瀬戸際なのです。主要企業も原子力産業からどんどん撤退しているのが現状です。
原子力小委員会(原子力政策を議論する経済産業省の有識者会議。原発推進派が大多数を占める)が出している方針、その議論にしても「全部再稼働したら」「新しい原発ができたら」といったタラレバの話が多いのですが、現状について話すときは非常に深刻です。いまを逃したら後が無い、仕事が無くなり産業を維持できないという議論が出てきます。
 また、原子力の業界団体である日本原子力産業協会が、一番不安を感じているのは、技術の維持・継承に欠かせない人材の確保です。新しく原子力の仕事をやりたいという入社希望の若い人材がいないのです。若い人は自分が働こうとする業界の未来を機敏に受け止めますから、それは当然でしょう。原子力産業には、「一生かけてこれをやろう」という希望が感じられなくなっているのです。

(P.9-10記事抜粋)

 

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