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電気料金値上げの理由と原発支援の仕組みを解明する-㈱生活クラブエナジーの場合
(㈱生活クラブエナジー 事業部営業企画セクションマネージャー 知野二郎さん)

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電力市場との連動が値上がりの原因

 

 物価上昇で、生活が苦しくなっているいま、大きな問題が電気料金の値上げだ。例えば大手電力5社(東北、北陸、中国、四国、沖縄)は、2023年4月以降3?4割の値上げを経済産業省に申請している。値上げの理由は燃料費の高騰による経営の圧迫としている。燃料費で大きいのは火力発電所を動かす化石燃料にかかる経費だ。
 この値上げは大手電力に限らない。主に再生可能エネルギー(再エネ)の電気を扱っている小売電気事業者(新電力)がどうして、値上げをするのか。
 生活クラブエナジーも、他の新電力と同じように値上げを予定している。なぜ値上げをするのか、その仕組みを見ていきたい。
 生活クラブエナジーは、電力自由化後に参入した新電力の一つだ。供給する電力の約75%を相対契約(企業間で個々に取り交わされる契約のこと)の発電会社から購入、生活クラブ生協の物流センターなどの施設や山形県遊佐町の太陽光発電、秋田県にかほ市の風力発電などの自社発電電力が13%を占め、12%を市場(日本卸電力取引所JEPX)から調達している(22年度実績)。つまり調達電源のほとんどが再エネの小売電気事業者なのである。
 生活クラブエナジーのような新電力の電気料金が化石燃料の高騰とどう関連するのか。それには燃料費調整制度と再生可能エネルギーの固定価格買取(FIT)制度が大きくかかわっている。
 燃料費調整制度とは、発電コストが世界の原油市場価格や為替レートなどに大きく影響されるため、燃料価格の変動から電気事業者の経営を守るために、燃料コストの変動を電気料金に反映させる制度だ。再エネ発電が本格化する以前の1996年に導入された。法令によるものではないが、電力自由化後も多くの新電力が導入している。
 FIT制度は、再エネで発電した電気を電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度だ。しかし、FIT法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)の改正により、2017年4月よりFIT電力の買い取りが送配電事業者に限定され、新電力は発電者と相対での売買契約ができなくなった。
 新電力は、送配電事業者を経由してFIT電力を買い取ることになった。ところが調達費用は原則として、市場価格と連動することが決まり、新電力の買い取り分は21年度から全量が市場価格連動に移行した。つまりFIT電力の割合が多い新電力なのに、燃料費調整額の影響を受けることになるのだ(固定価格のFIT電力も燃料費調整額は加味されている)。
 「再生可能エネルギーを調達しているのに、化石燃料高騰の影響を受けてしまう制度は、改善の必要がある」と生活クラブエナジーの知野二郎さんは言う。

(P.81-82記事抜粋)

 

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