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市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

地域からのエネルギーシフト(世田谷みんなのエネルギー理事長 浅輪 剛博)

季刊『社会運動』 2016年4月号【422号】 特集:市民が電気を作る、選ぶ

「カリタス下北沢ソーラー市民協同発電所」まで

 東日本大震災を経験し、「声を上げるだけでなく、実際に動かないといけない、エネルギーシフトのために」という気持ちが強くなりました。そこで、地産地消のエネルギーを目指した地域コーディネートと、再生可能エネルギー、省エネルギー機器など、技術者育成を事業内容に掲げたNPO法人世田谷エネルギーシフトの設立趣意書を書き上げ、2011年9月、仲間を募りました(109頁)。この呼びかけが世田谷みんなのエネルギーにつながっています。
 独特の魅力を持つ商店街と良好な住宅街に囲まれた世田谷区下北沢の一角に緑に溢れた教会があります。ここが、世田谷で最初の市民出資で作られたソーラー発電所のあるカトリック世田谷教会です。
 この教会は以前から地域の市民活動やアートイベントなどに開かれていました。私たちは、震災で被災した東北の農家の美味しい農産物を世田谷に紹介したいと、ここで2012年4月30日に下北沢あおぞらマルシェを開催しました。40から50ほどの日本各地の農家や手作りの雑貨屋が集まり、多くの人で賑わいました。
私も参加する持続可能な地域を目指し活動している「トランジション世田谷茶沢会」も出店し、ソーラー発電パネルの実演を行ったのです。このソーラーパネルは前年にセル一枚一枚をハンダ付けしながら20人ほどの仲間たちと手作りしたパネルでした。このソーラーパネルを見た教会の神父さんや信徒さんが「ぜひ教会でも再生可能エネルギーに取り組みたい」と一気に話が盛り上がりました。
 2012年5月27日、私たちが主催した「世田谷エネルギーシフトみんなの未来の教室」に150人以上が集まりました。長野県飯田市の原亮弘さんや城南信用金庫の吉原毅さん、環境エネルギー政策研究所(ISEP)のみなさんなど、多彩で先進的な取り組みをされている方たちをお呼びして、同じ壇上に保坂展人世田谷区長をはじめ世田谷の住民たちが一緒に座って話し合い、実際にこの世田谷という地域で何ができるかを探っていくという趣向でした。さらに、参加者の皆さんに呼びかけて5、6人のグループに分かれてワールドカフェ(メンバーを変えながら少人数での話し合いを続ける議論の方法)も行い、様々な意見を共有していきました。
この中から市民共同発電所をぜひ世田谷に作りたいというメンバーが生まれました。カトリック世田谷教会の信徒会館の屋根に、世田谷区が行っていたソーラーシステムの共同購入「せたがやソーラーさんさんプラン」の協力も得ながら半年間ほどの準備を重ねて、ついに2013年6月18日に10.01kwの太陽光発電を設置できたのです。名付けて「カリタス下北沢ソーラー市民協同発電所」です。
 この発電所は、設置費が380万円ほど、その他の準備費用が20万円、合計約400万円で設置しました。そのうち、100万円は100名ほどのサポーター会員からの賛助金と寄付金です。さらに10名からの私募債が合計200万円。これは、10年後に1割の利子を乗せて返済します。残り100万円は10人のコアメンバーの信託金でまかなっています。これは10年後に売電成果に応じた分配があります。このように「寄付」「借用」「成果分配」という三種類の資金調達方法を活用して作られたことは他にはあまりない大きな特徴です。3年目に入った現在、予測以上に年40万円以上の売電成果を上げながら無事に稼働中です。

(記事から抜粋 P107~109)

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