生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

動き出した地域社会のうねりと「ご当地エネルギー」(全国ご当地エネルギー協会 渡辺 福太郎)

季刊『社会運動』 2016年4月号【422号】 特集:市民が電気を作る、選ぶ

住民―自治体の連携による 電力の地産地消やまちづくり

 この間の自然エネルギーの普及の様子を見渡してみると、住民参加のほか、自治体が地産地消の電力供給を目指し参入していることや、まちづくりの視点から取り組みを始めている事例などもみられるようになった。住民と自治体とのコラボレーションの機会も生まれ、両者の連携により事業を進める、いわゆる「新しい協働」と言えるモデルも見られるようになった。その一例として、協会にも加盟する新潟県新潟市の一般社団法人「おらって」にいがた市民エネルギー協議会(以下「おらって協議会」)の活動を取り上げたい(「おらって」とは新潟の方言で「私たち」という意味)。「おらって協議会」は、2014年12月に主婦や大学教授らによって発足し、2015年6月には協議会を母体として「おらって市民エネルギー株式会社」が設立された。
 おらって協議会は、自然エネルギーの導入促進を計画していた新潟市環境政策課が主催した、自然エネルギーのワークショップに参加した有志らが立ち上げ、設立後も両者の協力関係のもと取り組みを進めてきた。また、2015年8月に新潟市とパートナーシップ協定を締結し、環境教育などを行っていくことを条件に、同市の所有する公共施設の屋根や土地を無償で借り受け、そこに太陽光パネルを敷設するという展開へと進んだ。事業主体である株式会社によって、現在は公共施設の屋根や土地のほか、住民から借り受けた土地、民間事業者の社屋など計4カ所に、いずれも50kW以下の低圧の太陽光パネルを敷設している(2015年12月末時点)。今後、新潟県内の全22カ所で総規模1メガワット弱の太陽光発電の建設を目標として、順次施工を進めている。
 また、おらって協議会では、毎月ワークショップなど通じて広く市民の声を取り入れ、参加者自身が発案したプロジェクトに参加していくことが特徴的である。民間の土地へのパネル敷設の際には、太陽光発電を身近に感じてもらう仕組みとして、「手作り発電所」と称し協議会の会員らがパネルを載せる架台設置を施工業者とともに行った。
 以上は一例であるが、各地で広がりをみせる「ご当地エネルギー」は各地域住民の柔軟な発想と活動によって、エネルギー分野への参加の裾野を広げることに貢献しているといえよう。4月からの電力小売全面自由化をきっかけに、これまで以上に住民が主体的に電力のあり方を選択することが可能になる。各地でうねりを上げ始めた「ご当地エネルギー」の取り組みは、地域の中に眠っていた住民の主体性を大きく喚起し始めている。

(記事から抜粋 P120~121)

16040405

インターネット購入