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水と石油の滑稽が食料危機を引き起こす 2.水の危機 人口増加と温暖化によって水不足が迫っている。(グローバルウォータージャパン代表 吉村和就)

季刊『社会運動』 2016年7月【423号】 特集:食料消滅!?

水不足で日本の食料自給はできない

 ここまでは「見える水」について話してきましたが、次に考えていただきたいのは「見えない水(仮想水)」という概念です。現在、日本の食料自給率は約 40%(カロリー ベース)ですから、約 60 %の食料は海外から輸入しています。海外でその食料を育てるために、どのくらいの水を使っているのか想定してみたのが、「見えない水」です。日本では年間、約530億トンの灌漑用水を使っていますが、輸入している食料を生産するために海外で使われている水は約640億トンになります。つまり、日本が毎年使っている灌漑用水の約1・2倍の水が海外で使われ、日本のために食料が 生産されているわけです。このことは、仮に日本の景気が悪くなり、海外から食料を買うお金が無くなって、国内で自給しようとしても水が足りないということを意味します。
 そして水問題について考える時には、必ず「エネルギーと食料と水」の三 つを一緒に考えなければなりません。例えば、前の章で大場さんが説明されたシェールオイル(ガス)の採掘でも、水問題が起こっています。シェールオイル(ガス)の採掘は、約2万気圧の水圧をかけて岩を割り、その間に特殊な砂や薬剤を入れて、常に水が流れるようにしなければなりません。シェールオイル(ガス)の油井1本につき約2万トンの水が必要なのです。
 そのため、アメリカ最大の穀倉地帯を支えているオガララ帯水層の地下水位が低下しています(図4)。世界最大の浅層地下水層で、面積は日本の国土の1・2倍もあり、米国の中西部8州にまたがります。
 今後、最悪の場合は枯渇して、小麦やトウモロコシが栽培できなくなり、世界の食料事情に大きな影響を与えます。既に一部の州では地下水が枯れるという事態が起こっています。さらにシェールオイル(ガス)の井戸から漏えいした薬剤によって地下水が汚染されるといった事故も報告されています。このためにアメリカの環境保護庁が法律によって汚水処理対策を実施しようとしていますが、米国では州ごとに権限が異なるのであまりうまくいっていません。水とエネルギーのかかわりでは、こうしたことも起こっているのです。

(P.36~P.38 記事から抜粋)

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