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市民セクター政策機構

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2.愛知県南予地方「百姓の理想郷」をつくる(地域協同組合無茶々園)

季刊『社会運動』 2016年10月【424号】 特集:地域自給で生きる 

人びとのライフステージに合わせて作る仕事の数々


 2013年5月には「㈱百笑一輝(ひゃくしょういっき)」が設立され、住宅型有料老人ホーム・デイサービス事業所の「めぐみの里」( 14年)、「海里(みさと)」(15年)をオープンした。大津さんは「今までは生産者を増やすこと、生産物を売ることで精一杯でしたが、これからは福祉事業への挑戦が本物の町づくりのスタートです」と話す。もっともここに至るまで20年の時が経っている。 女性部「なんな会」が自治体の協力を得て「ホームヘルパー養成講座」を実施したのは1995年のことである。現在までに2級ヘルパー130人を養成した。
 この福祉施設がユニークなのは、「高齢者が働けるデイサービス」を目標にしている点だ。介護予防のために仕事を作っているのである。例えば、パーティー用のクラッカーづくりや、加工品用の農産物の皮むきなどは、手先を使うので刺激になるし、多少の収入にもなる。「仕事も地域循環型にしたいのです。元気なうちは仕事をして、困ったときは施設で暮らせる地域を実現したい」と大津さんは語る。
 このように、無茶々園を中心とした地域には、「自給ネットワーク」の活動、とりわけF(食料)事業が確実に営まれ、E(エネルギー) 生産は今後の課題だが、C(福祉)領域の事業も展開されている。そして、その仕事(W)が「百姓の理想郷」づくりの実践として常に意識 されているのが見えてくる。地域の自然の持続性に配慮した農業、「けんかできる条件をつくっておく」という生産者の立場の確保、後継者の育成などの日々の実践が、百姓にとっての「安心、プライド、将来への夢」が確保されるだろう未来の理想郷へと向かっているのである。
 同時に各事業は、コミュニティの構成員に合わせて生み出されているようだ。生産者、新規就農者である若者、女性、仕事から離れた高齢者といった、この地に生きる人びとのライフステージに合わせて農業の仕事、研修事業、配食サービスや介護施設が設定されている。そこにはせわしない経済原理で動いている時間ではなく、地域に生まれ老いていくまでの「田舎暮らし」の時間がゆっくり流れているようだ。


(P.61~P.63 記事から抜粋) 52-53

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