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市民セクター政策機構

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5.山形県置賜地方「生産基地」を再興するために(置賜自給圏構想)

季刊『社会運動』 2016年10月【424号】 特集:地域自給で生きる 

外からの力を使うのではないもう一つの地方再生


 山形県の置賜盆地は山形県の南部にあり、米沢市を中心とした3市5町(米沢市、南陽(なんよう)市、長井市、高畠町、川西町、小国(おぐに)町、白鷹(しらたか)町、飯豊(いいで)町)の自治体から成り立っている。最上川の上流に位置していることから、水量が豊かで農産物の生産力が高い土地だ。盆地で冬が長いことから、家庭では昔から非常に優れた食の加工技術が伝承されている。その代表が漬物だ。また畜産では全国的に有名な米沢牛が置賜地域で飼育されている。
 この置賜地方で有志が集まり「置賜自給圏構想」というプロジェクトが動き出している。
 この構想は、以下の四つの目的を持っている。
1.地産地消に基づく地域自給と圏内流通の推進
再生可能エネルギーの地産地消、圏内の消費者と生産団体を有機的に繋ぐシステムの構築。
2.自然と共生する安全・安心の農と食の構築
社会資本としての農村、自然環境の評価、有機農業の推進など。
3. 教育の現場での実践
置賜地域にある栄養大学、農業高校と行政施策との連携システムの構築などを行う。
4. 医療費削減の世界モデルへの挑戦
食から健康を考える理解を促進、健康長寿による医療費削減のモデルを構築。

 この構想の実現を目的として2014年に設立したのが「一般社団法人 置賜自給圏推進機構」(注)である。その専務理事が井上さんだ。「生活クラブやまがた」の前理事長で、現在は、高齢者の介護活動を行う特定非営利活動法人「結いのき」専務理事でもある。
 井上さんは、1954年に米沢市で生まれた。60年以上にわたって米沢の変化の中で生きてきたことになる。つまり、高度経済成長期、構造不況、企業誘致による雇用促進、そして企業が撤退した後の衰退も見てきた。
 井上さんは、最近の地域の衰退についてこう語る。
「この米沢に活気がなくなってきたのは、バブル経済がはじけてからしばらく経ってからでしょうか。市内の八幡原中核工業団地にあった誘致企業が合併や撤退を始め、従業員の合理化が進み、失業者も出てくるようになったのです。残った企業は、正社員ではなく派遣労働者に依存するようになり、働く人たちの所得が落ちていった。金曜夜の飲み会が少なくなり、街中から活気が消え失せていくのが目に見えてわかる時代になってきました。
 そんなふうになればなるほど、米沢あるいは置賜の住民たちは相変わらず、誘致企業をなんとかしろと行政や政治家に要望してきました。しかし、企業の撤退はグローバル経済の動きの反映ですから、なんとかしろと言われて、すぐになんとかできるものではない。こんな時代が10年になろうとした2013年暮れに、有志が集まり立案したのが置賜自給圏という企画なのです。企業誘致や国の補助金から始まる地域活性化ではない、もう一つの地方再生を始めようということですね」


(P.92~P.95 記事から抜粋) 92-93

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