すべての少女に「衣食住」と「関係性」を!(女子高生サポートセンターCoiabo代表 仁藤夢乃)
子どもの性の商品化に寛容な日本社会
売春する中高生について、どんなイメージを持っていますか。ある大学の授業でそう
投げかけると、こんな言葉が返ってきました。「快楽のため」「その場限りの考えで」
「遊ぶ金ほしさに」「自分も街で誘われたことがあるが断ったから、やる人はやりた
くてやっているのだと思う」「そんな友だちはいなかったから、わからない」「正直、
そんな人と関わりたくない」「どうしてそこまでやれるのか、理解できない」など。
そう答えた学生たちは、当事者には関わったことがないと言いました。
日本では、90年代から、児童買春について「遊ぶ金欲しさに」「気軽に足を踏み入れ
る少女たち」という文脈で、時には大人から少女への援助であるかのように語られ続
けてきました。そこにあるのは「援助」や「交際」ではなく、「暴力」と「支配」の
関係ですが、お金を介することで、子どもへの性暴力を正当化しようとする人が多い
ことも日々感じています。
「ブルセラブーム」などとし、少女が積極的に、自分のアイデンティティとして性を
売っているという取り上げ方が大々的になされた時代がありましたが、今、Colaboに
は、当時高校生だった女性たちから「自分も本当は苦しかったんだ」「貧困や性虐待
などからそうせざるを得ない状況があったのだ」という声が届いています。「売る・
売らない」という自己責任論で語ることで、苦しんでいた女性たちの声がかき消され
てきたのだと感じています。買う側の存在や性暴力、子どもの傷つきやケアに目を向
けなければならないと思っています。
2015年の夏、16歳の少女が売春防止法5条の勧誘罪で逮捕されました。少女は高校を中
退し、家に帰らず半年間、居所不明で、任意の事情聴取ができないことから逮捕に踏
み切ったと警察は発表。多くのメディアが「少女は遊ぶ金欲しさに売春し、得た金を
洋服や映画代にしていた」と報じました。しかし、私は彼女には、家に帰れない、帰
りたくない理由があったのではないかと想像しています。半年間生活するには衣類や
映画などの娯楽も必要ですが、それだけではないはずです。私は「売春で得た金を食
費や生活費、学費、給食費や修学旅行費にしていた」という中高生と出会っています
が、そのような話を取り上げた報道は目にしたことはありません。
ある中学生は、父親に殴られ裸足で家を飛び出しました。真冬の深夜2時ごろ、小さな
街中にある階段に座っていると、男に声をかけられ、事情を話すと、コンビニでおに
ぎりを買ってくれ、手を握られて「まずいと思ったが、怖くて抵抗できなかった」と
言います。男の家に着き、おにぎりを食べると「歯磨きかお風呂、どっちかやる?」と
聞かれ、断ったが強姦されました。初めての性行為でした。「声をかけて来るのは、
そういう男の人だけだった。寝たくてもどこで寝たらいいか分からないし、頼れるの
はその人たちだけだった」と言います。
(P.19~P.20記事から抜粋)