生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

なぜ、女性は貧困なのか(ノンフィクションライター 飯島裕子)

季刊『社会運動』 2017年4月号【426号】20年後、子どもたちの貧困問題 格差社会を終わらせよう

 

女性の貧困率は高止まり

 女性の貧困は、はるか昔から存在し、そして今も存在し続けている─しかし、その状況

が明らかにされる機会は、これまでほとんどなかったように思う。

 そんな女性たちの貧困が大きく報道されたのは、2011年末、朝日新聞紙上であった。

「単身女性、3人に1人が貧困」という記事が第一面に掲載されたのだ。記事によれば、

単身女性全体の32%、65歳以上の単身高齢女性と母子世帯の50%以上が、国民一人あた

りの可処分所得の半分に満たない貧困状態にあるという(資料1)。これは国立社会保障・

人口問題研究所が2007年の国民生活基礎調査をもとに算出したものであり、統計が発

表されるずっと以前から女性の貧困率は高かった。

ところがこの記事が掲載された直後、最も注目されたのは、20代、30代の若年女性の

貧困であった。「貧困女子」という言葉が生まれ、かつては最も貧困と縁遠いと思わ

れていた若年女性たちが貧困に陥っている─とさまざまなメディアが彼女たちの状況を

取り上げていった。

その後現在まで、「貧困女子」に対する世間の注目は続いているものの、彼女たちが

なぜ貧困に陥っているのか、構造的な問題に踏み込んでいるものはほとんどないよう

に思う。

昨今、貧困問題への人びとの関心は高まっている。2000年代初頭以降、「学校を卒業

しても仕事が見つからない」「非正規の仕事を転々としている」「派遣切りに遭って

家を失った」など、若者、とりわけ若年男性から始まった貧困に対する人びとの関心

は、現在、子どもに対して向けられている。新聞等のメディアで「子どもの貧困」に

関する報道を見かけない日はないくらいだ。一方でシングル女性の貧困やその困難に

注目が集まることは非常に少ないように思う。

私は2012年〜15年まで、無業もしくは非正規で働く若年女性(40歳未満)に対するイン

タビューを続け、50人近くの女性たちに話を聞いてきた。詳しくは『ルポ貧困女子』

(岩波新書)に書いてあるので、そちらを読んでいただければと思うのだが、その中か

ら数人のケースを紹介し、若年女性たちの置かれた現実について見ていきたいと考え

ている。

(P.26~P.28記事から抜粋)

インターネット購入