福祉の限界を超える町民すべてが生涯現役(藤里町社会福祉協議会会長 菊池まゆみ)
「福祉で町づくり」を着実に進める「藤里方式」
2005年、藤里社協は「福祉で町づくり」を合言葉に掲げて、秋田県社会福祉協議会(以
下県社協)の「地域福祉トータルケア推進事業」に取り組み、他モデル地区とは違う
「藤里方式」を自称しました。
役職員に向けた説明で強調したのが、地域の中の「支援する人」「支援される人」の
関係です。たとえば一人暮らしの高齢者は、一人暮らしの不便さを抱えた「支援が必
要な人」ですが、同時に、時間を自分で自由に使える人ですから、頼もしい「支援す
る人」だとも考えられます。
地域で暮らす人たちを、「支援する人」「支援される人」と明確に分けることは難し
いと思います。誰にも、支援が必要な部分(時)もあれば、支援ができる部分(時)もあ
るのですから。
社協が、必要な人に支援を提供するのは当然ですが、地域における自己実現(自分にで
きる役割や活躍の場探し)のお手伝いも、その業務です。そのことを示して、全ての社
協の事業・日常業務を、目的に向かって意図的に実施する体制にする。この事業はそ
の試みでした。
印象的だったのは「ふれあいマップ」の作成です。商店街の空き店舗を利用してサロ
ンを作るというアイデアがあっても周囲の抵抗がありました。そこで、サロン的役割
を果たしてきた商店を中心に、商店街丸ごとサロンとなり、そのマップを作ってしま
おうという事業でした。
喜んでもらえると思って商工会に企画を持ち込んだところ、「良いことだ。頑張れ。
自分たちは手伝えないけれど」と言われました。事情を聞けば、商店街以外にも商工
会加盟店があるので、特定の商店街マップの作成に関わることは難しいとのこと。
「社協なら利害関係のない福祉だからできる」とおだてられました。このように福祉
だからできることはあるのです。
商店街を訪ね歩けば、用件を言う前に「忙しいから協力は無理」「難しい福祉は無理」
と相手にしてもらえません。これまでも各商店がやってきた、「バス待ちの高齢者が
立ち寄ったら話し相手になることや、お茶の一杯を提供すること、それがお願いです」
と言えば「そんなことでいいのか」と逆に驚かれました。商店街のみなさんは、「福
祉は特別なことで難しい」と思っていたようです。
「ふれあいマップ」の加盟店には募金箱を置かせてもらい、募金を集金に行きつつ地
域の情報をもらいます。その情報量の多さには驚くばかりです。その後、ふれあいマッ
プ加盟店とは、「お買い物ツアー事業」等で協働し、「ひきこもり者等体験カリ
キュラム」の講師をお願いし、つながりを大事にしています。今まで社協の活動
に無関心だった商工会から、現在では新年会への招待も来るようになりました。
「地域福祉トータルケア推進事業」のモデル地区社協として四つの重点項目に取
り組み、予想以上の成果を上げて5年間のモデル指定を終えた時、新たに見えた地域福
祉の課題に向けて、藤里社協独自の五つ目の重点項目として「次世代の担い手づくり」
を定めました。
その第一段階として、「若者支援事業」に着手したところ、障害者や失業者など対象
を明確にすべきという指導が県社協から入りました。本当は、対象を限定せずに若者
支援がしたかったのです。ほんの少しの失敗で普通のラインから外れたと思い込み、
戻り方が分からず身動き取れずにいる若者の支援が。そこで、正式名称は「ひきこも
り者及び長期不就労者及び在宅障害者等支援事業」(以下ひきこもり者等支援事業)と
なりました。
(P.60~P.62記事から抜粋)