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オランダの子どもはなぜ「幸せ」なのか(教育・社会研究家 リヒテルズ直子)

季刊『社会運動』 2017年4月号【426号】20年後、子どもたちの貧困問題 格差社会を終わらせよう

幸福度の背景にあるのは

家庭生活と大人の社会意識のあり方

─ユニセフの調査によると、「オランダの子どもたちは先進国一幸せだ。一方、日本の

子どもたちは孤独を感じている割合が非常に高い」という報告があります。この違い

は何に原因があるのでしょうか。

 

 ユニセフの調査は、「自分が幸せと思うか否か」といった主観的な幸福感に関する調

査だけでなく、「物質的豊かさ」「健康と安全」「教育」「行動上のリスク」

「住居と環境」などの社会的、経済的要因も含め、6項目について生活の満足度を評価

しています。

 これは国連などが行っている「大人の幸福度調査」の経験に基づいてつくられたもの

です。多分、この調査結果に注目して議論をしたのは、日本では私が初めてだと思い

ますが、その後「オランダの子どもたちが幸福なのは、学校教育が素晴らしいから」

と短絡的に受け止められることが多いのが気になっていました。確かに学校も大切な

要因ですが、幸福度の背景にある多くの原因は、家庭生活のあり方、大人たちの社会

意識、生活や仕事への態度が影響していると思っています。

 オランダの子どもたちの場合、2007年の調査では「物質的豊かさ」は21カ国中、真ん

中くらいでしたが、主観的な幸福感は21カ国中一番でした。2013年の調査では29カ国

中、「物質的豊かさ」もかなり高くなり、再び1位となりました。オランダの子どもた

ちは北欧諸国よりも豊かさの実感が高いのです。子どもが主観的に自分の生活が良い

と言えるのは、貧富の格差が小さいからでもあります。身近な人たちとの差がなけれ

ば、不満や不条理の感情が生まれにくいのは当然です。

 この調査の元データになっているWHO(世界保健機関)の報告書を見ると、学校教育だけ

でなく家庭生活が豊かであることが見えてきます。例えば「思春期に両親とよく話を

しているか」という調査では、普通、どの国でも13歳、15歳と年齢が上がっていくに

つれて親子のコミュニケーションの比率が下がりますが、オランダの場合はあまり下

がらないのです。親子の接触が十分にあり、子どもたちが大人に見守られていること

が子どもの幸せ感の大切な条件なのです。それは親たち自身が精神的にゆとりある生

活をしていることも意味しています。

 就労者の年間平均労働時間をみると、日本人の場合は年間1719時間、オランダ人

は1419時間と300時間もの差があります。オランダ人の労働時間は、アメリカ

人に比べて370時間ぐらい、スウェーデンと比べても200時間少ないのです。その違い

は残業をしない、有給休暇は必ず消化するというように、勤務時間を無駄に延長しな

い働き方をしていることからきています。結局、大人が精神的にゆとりのある生活を

しているから、子どもたちも幸せなんですね。

 

(P.118~P.120記事から抜粋)

 

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