生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

人口減少が及ぼす影響

 人口減少の影響を先ほどの5区分で見ると、①大都市都心は、現時点から見てほとんど人口減少の影響を受けないのではないか。ここでは新しい住宅が建つとそこがある程度売れて人が埋まっていくので、それほど心配する必要はないと思います。
 ②大都市郊外とは東京でいうと多摩地域ですが、現時点でほとんど空き家はありません。空き家に見える家は確かにありますが、オーナーさんに聞くと「使っています」というパターンです。
 郊外の町は団塊の世代が人口のボリュームゾーンなのですが、彼らがここ数年で地域に戻ってきました。1990年代に最先端で働いていた世代です。これは東京に限らない全国的な傾向だと思いますが、その人たちの力でこれから10年位は、かつてできなかったほどの、素晴らしいコミュニティができるのではないかと思います。いままでよりコミュニティの担い手は確実に増え、知識も体力もある世代ですから、僕はすごく可能性を感じています。しかしもちろん、彼らも老いますから、10年、15年後に何が起きるかは注意が必要です。
 ③大都市超郊外というのは、中心部から50から70キロメートル圏です。首都圏で言うと埼玉県や千葉県で、バブルの時、東京へのギリギリ通勤圏として開発され、埋まりきらずにまだ分譲中といった所です。同じような所は大阪圏の伊賀(三重県)などでも見られます。こうした所は、宅地造成された土地に家がポツポツしか建っていない状態で、人口減少期を迎えています。そこには30代の人も70代の人も住んでいて、思いのほかコミュニティ活動が活発で、コミュニティセンターの活動が盛り上がっていたりします。だから、見た目空き地だらけでも、気の持ちようで結構楽しい生活ができるのかもしれません。

地方都市の様々な課題

 ④地方都市中心は商業の問題がダイレクトに効いています。90年代後半から中心市街地の衰退、空き店舗の問題が地方都市の課題としてクローズアップされてきましたが、多くの地域でずっと解決されないままです。中心市街地の活性化政策を始めて20年ほど経ちましたが、ある程度衰退が止まったり、歯止めがかかったまちはあるのかと言えば、大半はそうではありません。人口も回復していない所が多くあります。
 一方、⑤地方都市郊外は相対的には人がしっかり住んでいます。地方都市はとにかく車社会なので、車の環境が整っていること、例えば、道路がしっかり整備され、家の敷地に複数の車が止められるといったことが重要で、そういった市街地は住み替え、新陳代謝が起きています。地方都市が郊外だけになるというのは、そんなに楽しい未来ではないかもしれませんが、まちとしては最後まで生き残るかもしれません。
 車を運転する人は分かると思うのですが、車に20分乗るのと30分乗るのとは、感覚的にほとんど変わりません。でも電車で20分かかるのと30分かかるのは、随分と違うように感じます。また、日本の車は乗り心地がいい。自治体が財政難で道路の補修が十分できなくても、車のサスペンションがきっちりしていれば意外と大丈夫かもしれません。地方都市の場合、このような車との対応関係も都市を評価する大事な視点です。
 もちろん、車に乗れなくなった後の問題はあります。地方都市の「サービス付き高齢者向け住宅」は、市街地から離れた、窓から山しか見えないような所にあることが多いけれど、それではあまりにも刺激が少なく、高齢者の心身の健康によくないと思います。体が動かなくなったら、やはりまちなかに集住するべきでしょう。例えば様々な人が行き来するスーパーマーケットのフードコートが見下ろせるサービス付き高齢者向け住宅なら、刺激もある。車に乗らなくなった人たちの終の棲家のあり方は、⑤地方都市郊外でも考えなくてはいけない課題です。

(P.15~P.17記事から抜粋)

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