生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

 子ども、地域、旅人など多世代多国籍の人びとが集う場所が横浜市西区東ヶ丘にある「CASACO(以下、カサコ)」だ。
 夏休みが始まった7月下旬の早朝、カサコの道路側に大きく開け放したスペースで小学生や近所の大人たち十数人が朝食を楽しんでいた。近くの小学校で行われるラジオ体操に合わせて開いたイベント「世界の朝ごはんウイーク」に、体操を終えた子どもたちがやって来たのだ。
 その日のメニューはイスラエルの朝ごはん「シャクーシュカ」。トーストしたパンの上に、炒めたタマネギ、トマトなどと半熟卵を乗せた料理だった。トルコ、トンガ、スペインなどの朝ごはんを日替わりで提供する。食事が済むと、子どもたちは三々五々帰宅し、仕事に出かけていく大人たちもいた。「世界一グローバルでローカルな、まちの寺子屋」を目指す「カサコ」らしい光景だった。

「Connection of Children」の活動を見せる場を作る

 カサコは、2017年度の「キララ賞」を受賞した(生活クラブ生協神奈川と福祉クラブ生協が主催する、オルタナティブな生き方を通して、地域をいきいきとさせる若者を応援する賞)。共同代表の一人の加藤功甫さんは、賞金50万円を「建物の寒さ対策費用にあて、高齢者も利用しやすい環境を整えたい」と話した。築70年の古民家を改築してつくったこの場所は今もコツコツと改良を続けている。
 カサコには多世代・多国籍の人びとが集う。それによって新たな人のつながりやアイデアが生まれるとともに、異なる価値観や文化を互いに受容し、違いを楽しめる場所にしようというのだ。
 そもそも加藤さんがこうした交流の場をつくりたいと思ったきっかけは、友人と自転車でユーラシア大陸を横断した旅の体験にある。教師を目指して入学した横浜国立大学在学中に日本全国を自転車で旅をした。
 さらに大学院に進み、世界各地で出会った子どもたちに1本20センチの糸を手渡し、前の糸の先に結んでつないでもらうというプロジェクトを考え出した。それを繰り返すことで世界の子どもたちを1本の糸で見える形でつなげようという、「コネクション・オブ・チルドレン(Connection of Children)」と命名したプロジェクトである。2011年4月から12年3月かけて行ったユーラシア大陸横断2万キロメートルの旅を通して、31カ国、5000人以上の子どもたちを糸でつないだ。
 この旅で、世界各地で家族のようなもてなしを受けたことから、その恩返しをするためにも、外国人が日本に来た時に同じように感じられる場所があればいいという思いが浮かんだ。「日本はあったかいね。こういう場所があってうれしいね」と思ってもらいたい。最初は漠然としたイメージからカサコが生まれたのだ。
 糸をつなぐ旅のプロジェクトはその後も続いており、13年から世界を一つの大きな家族にをテーマに掲げ「NPO法人Connection of Children」として活動を展開している。そこから逆に、日本の子どもたちが実際に世界の人と会える場が欲しいという声も出てきた。

(P.72~P.75記事から抜粋)

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