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3.非難指示が解除された飯舘村のいま―村出身の新聞記者が語る(大渡美咲 産経新聞記者)

季刊『社会運動』2018年1月【429号】特集:あれから7年、福島の現実

帰村宣言1年後の飯舘村は?

 

─2018年3月には3・11東日本大震災から丸7年の春を迎えます。飯舘村にとってこの年は何か節目の年になるでしょうか。

 

震災から7年というより、17年3月末の帰村宣言から1年には何か意味があるかもしれませんね。

 

─ああ、なるほど。どなたか帰村された人のことはご存知ですか。

 

 17年11月の発表で村内居住者は546人、288世帯と聞いています。戻られた方がたの7割が60歳以上とも聞きました。現地を取材して家を新築している風景は見つけたりします。しかし若い世代は飯舘村に戻ることに慎重なようです。あ、身近に一人いました、私の父です(笑)。父は66歳、飯舘の自宅を一度壊して小さ目の家を建て直して、いまは現地に住んでいます。私の実家は草野地区にあり、居住制限区域でしたが、「居住制限が解除されたら俺は戻る」と話してましたね。

 

─お父様の仕事は?

 

もともと農業を営んでましたが、アスパラガスの栽培を再開して出荷もすると意気込んでいます。早速ユンボ(パワーショベル)も購入して。〝大渡農園〟という名前が刻んであったので、かなり本気みたいです(笑)。

 

─お母様も一緒ですか?

 

いえ、母は震災後に福島市に建てた家の方に残ります。ただ飯舘にある菊池製作所(震災後も営業を続けた精密部品・金型工場)に勤めていて、冬の間は雪が多いので飯舘に泊ることが多くなりそうですね。

 

─飯舘村での暮らしぶりは、震災前と変わりませんか。

 

買い物なんかは不自由がありますね。かつてあったスーパーは復活していなくて、村には2軒のコンビニがあるだけ。この前知り合いの女性が子どもを連れて訪れましたが、あいにくおしめを忘れてきてしまった。でもコンビニでは売ってないし、南相馬市や川俣町まで買いに行かないといけない。細かな部分で住む環境が整っていないのが分かります。

 

学校には通うが、村には戻らない子どもたち

 

─国際放射線防護委員会(ICRP)の考え方に依拠して、年間の被ばく線量が20ミリシーベルト以内なら住んでも大丈夫、という決定を政府と村は下したわけですが、大渡さんどのように感じますか?

 

 判断は難しいですね。私は村に帰る人間ではないし。17年3月もまだ早いという人、早く解除してほしい人、両方の人がいました。絶対に正しいとも間違っているとも言い切れない。年齢や性別、家族や子どもの有無によっても変わっていくでしょうし。私と同世代の人は、なかなか帰りませんね。

 

─同世代が帰れるような状況は?

 

 やはり線量が下がったり、農地に置かれたままのフレコンバック(除染で出てきた表土や草木などの放射性廃棄物を詰めた黒い袋)が村の中からなくなった時とか。18年の新学期から地元の学校がスタートするので、それもまた一つのきっかけになるでしょう。

 

─18年の4月から幼保一貫型の「認定こども園」と小中一貫校が同じ敷地の中で開校します。すると0歳〜15歳まで、子どもがずっと飯舘村で育つことが可能になりますね。

 

 17年10月のアンケート調査では、飯舘村の学校に通うと決めた子どもの数が90人に増えました。子どもの意見を尊重した親も多くて、小学校の仮設校舎は川俣町にありますが、「友だちと離れたくないから飯舘の学校に通う」と決めたケースも多いですね。ただし飯舘に家族が戻るというよりは、避難先から通うとか新しく建てた家から通うという人もいるので、全員が飯舘に帰るというのは考えられませんが。

 

─ああ、そうか。子どもと両親合わせて、90×3=270人が飯舘村に戻るという計算にはならないんですね。

 

 残念ながらそうですね。スクールバスが出ることになったので遠距離通学の児童が多いでしょうね。飯舘村にポンと帰ると言っても、6年経つと家も相当に傷んでいて、補修が必要です。私の父の場合は全村避難の後もほぼ毎日、パトロールで実家に戻ってましたが、それでもネズミが巣くったりしてましたから。

 

─線量の数値がどうなれば同級生は戻るでしょうね。

 

 それはみんな「元に戻してほしい」と言ってますよ。「無理矢理20ミリシーベルトなんて言わずに、もとの1ミリに戻すべきだ」という考えです。子どもを持つ友だちは「1ミリたりとも我が子に被ばくさせたくない」と言います。私に子どもがいたら、きっと同じだろうなと思いますよ。

 

(P.35~P.40記事から抜粋)

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