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【日米地位協定】
「日米地位協定」と「朝鮮国連軍地位協定」にもとづき日本に米軍基地が置かれ、朝鮮有事の際には日本も自動的に交戦国となる。

「改憲より「日米地位協定」の改定を! (ジャーナリスト 布施 祐仁)」

季刊『社会運動』2018年4月【430号】特集:改憲・戦争に反対する12の理由

 

米軍の軍事行動に巻き込まれる「朝鮮国連軍地位協定」

 

─在日米軍基地を拠点にした米軍の軍事行動に対しても、日本政府はストップさせられないのでしょうか。

 

 今、最も懸念されるのが、北朝鮮に対する先制攻撃です(※このインタビュー後の2018年3月9日、北朝鮮の金正恩氏からの首脳会談の呼びかけにアメリカのトランプ大統領が応じ、朝鮮半島の非核化に向けた米朝対話が始まる見通しとなっている。対話が始まれば当面、戦争の危機は回避されるが、アメリカが武力行使というオプションを捨てることはないだろう)。アメリカが北朝鮮を先制攻撃すれば、北朝鮮は在日米軍基地に反撃してくる可能性があり、そうなったら日本も戦争に巻き込まれることになります。アメリカが北朝鮮と戦争をする場合、在日米軍基地の使用は不可欠です。それに対して日本政府が拒否できるかというと、残念ながらできません。

 なぜなら、米朝間で戦争になった時に、日本は戦争に必要な基地を提供し、支援することを約束してしまっているからです。その約束とは、1951年に結んだ「吉田・アチソン交換公文」と1954年に結んだ「朝鮮国連軍地位協定」です。

 朝鮮は1945年8月15日、連合国軍の手によって日本の植民地支配から解放されましたが、北緯38度線以北をソ連が、以南をアメリカが占領統治する形で南北に分断されてしまいました。1948年には、北部に朝鮮民主主義人民共和国、南部に大韓民国という二つの国家が成立。1950年6月に北朝鮮が韓国に侵攻して朝鮮戦争が勃発。その後、米軍が指揮する「朝鮮国連軍」(注3)と中国軍が介入し、300万人が亡くなりました。1953年に、北朝鮮軍と中国軍と「朝鮮国連軍」を率いる米軍司令官の三者が「朝鮮戦争休戦協定」を結びました。これにより、約3年間続いた戦争が一時的に終結し、現在も「休戦中」となっています。

 日本がまだ連合国の占領下に置かれていた1951年、当時の吉田茂首相とアメリカのアチソン国務長官との間で、日本の主権回復後も「朝鮮国連軍」に対して基地を提供し、その活動を支援すると約束する「交換公文」を結びました。これに基づき、1954年、「朝鮮国連軍」の日本における法的地位を定めた「朝鮮国連軍地位協定」を結んだのです。この二つは今も生きています。

 現在、朝鮮国連軍の司令部は韓国にありますが、日本にも「後方司令部」が東京の横田基地に置かれています。また、七つの米軍基地(横田、座間、横須賀、佐世保、嘉手納、普天間、ホワイトビーチ)が朝鮮国連軍の基地にも指定されています。

 アメリカが北朝鮮を先制攻撃すれば、朝鮮戦争の休戦協定は破られ、再び戦争状態に突入します。その瞬間、朝鮮国連軍地位協定が動き出すのです。朝鮮国連軍地位協定では、朝鮮半島の有事に際して、日本は在日米軍の主要基地を国連軍に使用させ、出入国を認め、兵站調達に便宜をはかることになっています。したがって、米朝間で戦争が始まれば、自動的に在日米軍基地は米軍を中心とする「朝鮮国連軍」の補給拠点となるのです。

(P.83~P.85記事から抜粋)

 

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