1.自由・安心・つながりのある「21世紀の長屋」(サポートハウス和)
JR平塚駅からバスで15分。住宅街にある元社員寮を借り上げた2階建てアパート1棟が「サポートハウス和」だ。ここには10人の高齢者、障がい者などが一人暮らしをしている。1階中央の部屋が事務所。その隣が「コミュニティルーム」と呼ばれる、入居者たちのリビングだ。訪れたこの日は、毎週開催の「手芸クラブ」が始まっていた。テーブルの上にはたくさんの折鶴や牛乳パックを再利用した小物、壁には書道作品が飾られ、指南役のボランティア、数人の入居者が手を動かしながら、なごやかに談笑していた。今回訪れたサポートハウス和は、社会福祉法人いきいき福祉会のラポール平塚独自の住まい事業である。ラポール平塚は大きく分けて、住まい事業(サポートハウス和の運営)と、ホームヘルプ(介護保険・障害者支援及び制度外)の二つの事業があり、5人の常勤職員と5人の登録ヘルパーが勤務している。常勤職員は訪問介護員(ヘルパー)を兼任し、サポートハウス和の入居者以外の訪問介護サービスも行う。事業所の経営面を支えるには、住まい事業単独では難しく、ホームヘルプはなくてはならない事業だ。
入居者は高齢者に限らない
2018年で15周年を迎えるサポートハウス和(2003年9月設立)は、サポートが必要な高齢者や障がい者が安価な料金で安心して暮らせるための住まい事業として開設した。
当時、特別養護老人ホーム(114ページ参照)のラポール藤沢施設長をしていた小川泰子さんが、どうしてサポート和を開設したのかは、本誌8ページのインタビュー読んでいただきたい。
サポートハウス和の入居者は、基本は「自立」した生活ができる人である。
入居対象は高齢者に限らない。母子家庭、DV被害者、中途障がい者、生活困窮者など、誰でも受け入れてきた。職員は朝夕の声かけ、24時間の緊急時対応を行うが、施設として食事や介護の提供はない。その意味で、サポートハウス和は介護・福祉施設ではなく、「見守り付き賃貸住宅」とでもいった方がふさわしい。
現在は、高齢者や障がいを持つ方がそれぞれの要介護度や障害等級に応じて、訪問介護、通所介護などを利用する。
入居者は、ラポール平塚の訪問介護を週に数回利用することが条件だが、他の事業所の福祉サービスを併用しても構わない。あくまで個人のケアプランに基づき、在宅福祉サービスを選ぶ。最近増えてきた「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」(118ページ参照)は国の設備基準があり、バリアフリー構造が必須条件であるが、サポートハウス和はこの基準からは外れる。というより、制度とは無関係の民間住宅である。
(P.54~P.56記事から抜粋)