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2.ドヤをリノベーションした山谷のケア付き宿泊施設(山友荘)

季刊『社会運動』2018年7月【431号】特集:年金一人暮らし高齢者に終の棲家はあるのか

 「山友荘」は、かつて日雇い労働者が多く集まり、「ドヤ」と呼ばれる簡易宿泊所が密集する、通称「山谷地区」(東京都台東区、荒川区)にある。高度成長期のピークの1963年には、約1・6平方キロメートルの小さなエリアに222軒のドヤが軒を連ね、そこに約1万5000人もの人が暮らしていたという。だが、時代の変化とともに日雇いの仕事は減り、宿泊者数はかつての3分の1ほどになっている。

 現在、簡易宿泊所の利用者の大半は、生活保護を受けて暮らす人びとだ。仕事がないうえ、平均年齢は66・1歳。65歳以上の割合が62・9%(公益財団法人城北労働・福祉センター2016年)と、高齢化が進んでいる。元気なうちはまだいいが、ひとたび病気や障がいなどに見舞われれば、すぐに暮らしが立ち行かなくなるのは明らかだ。そんなギリギリの状況にある人たちにとって、受け皿の一つとなっているのが山友荘である。

 山友荘を運営するのは、山谷地区の日雇い労働者や路上生活者を支援するNPO法人「山友会」。1984年、有志の医師とクリスチャンによってこの地域に設立された無料診療所、山友クリニックに始まり、現在では、生活・健康上の問題や地域生活をサポートする相談室、隅田川河川敷での炊き出し、テント生活をしている人への訪問相談、山友会を訪れる人への昼食提供、ケア付き宿泊施設の山友荘、ホームレスや元ホームレスを対象とする居場所・生きがいづくりプロジェクトという、主に六つの事業を運営している。

 

 

簡易宿泊所が並ぶ路地に建つ高齢者たちの家

 

 山谷地区の入口、泪橋交差点の近くにある山友会事務所前の路地には、スタッフやボランティアたちが「おじさん」と呼ぶ利用者が集まり、談笑していた。

山友荘について話を伺ったのは、山友会副代表・油井和徳さんである。

 「無料診療所の患者、生活相談の相談者、ボランティアのほか、通りすがりの人が立ち話をしていくこともありますよ。おじさんたちは、しばらく顔を見せない仲間の心配をしたり、それぞれが役割を見つけては山友会の活動を手伝ってくれています」と、油井さんは話す。

 案内してくれた山友荘は、山友会の事務所から歩いてすぐの場所にあった。簡易宿泊所を借り上げ、リノベーションしたという二階家。通りには似たような外観の簡易宿泊所が並んでいることもあり、すっかり周囲に溶け込んでいる。

 引き戸をカラカラと開けると、右手に受付があり、その奥が食堂や浴室、洗濯乾燥機のある洗面所。1階、2階を合わせて21の部屋がある。定員は20人で、残りの1部屋はシェルターとして基本的には空けてあるそうだ。

 油井さんによると、「無料診療所の診察で保護が必要な方がいた際に使っていただいたり、生活相談の相談者で、一時的に住まいが必要な方が使用されることもあります」とのこと。広さは、簡易宿泊所の間取りそのままの3畳。床はすべてフローリングに張り替えてあり、各部屋にテレビ、ベッド、冷暖房、ナースコールが設置されている。

(P.63~P.65記事から抜粋)

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