1.一人暮らしの高齢者が自分らしい「最期」を迎えるために ―エンディングノートの書き方(ワーカーズ・コレクティブ生活クラブFPの会 羽場 真美 藤井 智子)
自分が認知症になった時のために
─ 亡くなった後というのはある意味、考えやすいところもありますが、自分が認知症になってしまった時のことは、なかなか想像がつきにくいですよね。一人暮らしで認知症になってしまったら、どうすればいいんでしょう?
藤井 なかなか難しいですね。よほどおかしな行動をしないと、周囲の人に気付かれにくいものです。介護予防のために体操教室などを開催しているところもありますから、介護が必要になる前から、そうした催しにも積極的に参加して、高齢者支援のネットワークとつながっておくことをお勧めします。知り合いが多ければ多いほど、いざという時に誰かが気づいてくれたり、手助けしてくれる確率が高くなります。
中学校区に一つくらいある「地域包括支援センター」が介護に関する窓口です。介護・保健・福祉の専門職が高齢者自身やその家族からの相談を受けたり、高齢者の見守りや支援、介護予防の推進など、高齢者の総合的な相談・サービスの拠点になっています。どのようなサービスを受けられるのかは、行政や地域によって違います。近くにある地域包括支援センターに、介護について不安に思っていることを相談してみてください。アドバイスをくれるはずです。
─ 認知症になった時のためにエンディングノートに書いておくことはありますか。
羽場 施設ではなく自宅で過ごしたいとか、あるいはその逆に、親族の負担にならないように施設に入所させて欲しいとか、そういう希望を書くことになります。地域包括支援センターで相談したことや、紹介された施設の名前を記録として残しておくと、お世話になる方の手がかりや判断材料になります。
要介護度が重くなると、在宅で生活を続けるためには手厚いサポートが必要になります。介護保険制度では、要介護度を判断してどの程度のサービスを受けられるのか決まります。要介護になってからの一人暮らしは容易ではないことを覚悟しておく必要があるでしょう。
また施設の入居費用やサービスは様々です。建物は立派でもサービスが行き届かない施設もあれば、古くて相部屋でも心の通ったサービスを提供している施設もあります。自分の年金や貯蓄を踏まえて、どのような施設を望むのか記載しておくことも良いでしょう。
藤井 認知症の人のための制度として「成年後見」という制度があります。本人が元気なうちに後見人を選んでおくのが「任意後見人」、認知症になってしまった後に家裁が選ぶのが「法定後見人」です(112ページのコラム参照)。
「後見人」というのは、判断能力が衰えた時に、お金の管理や契約を自分に代わって行う代理人です。
自分の家計管理、資産管理や介護サービス契約、施設入所契約などをお願いすることになります。判断能力が確かなうちに、自治体、地域包括支援センター、後見支援団体などに相談することをお勧めします。(*編集部記 例えば、神奈川県には福祉クラブ生協の「成年後見サポートW.Coあうん」(045-642-3580)があり、東京都には「特定非営利活動法人アビリティクラブたすけあい」(03-5302-0393)がある。生活支援、日常財産管理などを含む成年後見活動を行っている)
(P.109~P.111記事から抜粋)