2.介護施設の基礎知識 いざという時、あわてないために(認定NPO法人 市民シンクタンクひと・まち社事務局長 松浦 恵理子)
高齢になっても住み慣れた地域、できれば自宅で暮らしたいという人は多い。訪問介護、訪問看護など従来の在宅サービスや、24時間対応の「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」などの新たな地域密着型サービスを利用して、最期まで自宅で暮らす人も増えている。
しかし現実には在宅死の割合は13%。76%が病院死、施設などで亡くなる人は9%だ。多くの人は施設に入所し、病院で最期を迎える。今後、一人暮らし高齢者はさらに増加する。介護施設の基礎知識は誰にでも必要だ。
「住み替え」は、「いつ」、「どのような状態」で検討するかによって選択肢が変わる。元気なうちに早めに住み替えるのか、介護が必要になって住み替えるのか。「終の棲家」として考えるのなら、終末期医療への対応を検討することが何より大切だ。
高齢者向けの住まいは様々あるが、「安全・安心」と「自由」の二つを思うように得ることはなかなか難しい。住み替えに当たり優先することを明確にした上で、いろいろな施設を実際に見て、契約書をよく読んで判断するしかない。つまり、判断力のあるうちに情報収集することが必要なのだ。そこで主な高齢者向けの住まいの特徴をまとめた。これを参考に、行政の福祉窓口や「地域包括支援センター」に出向き、自分の住む自治体の施設を調べてみよう。病気になったり、介護が重くなっても入所し続けられるのか、「看取り」はしてくれるのか、気になることはともかく聞いてみることだ。施設の立派さと安心とは必ずしも一致しないことを忘れずに。
(P.113~P.114記事から抜粋)
介護老人保健施設
運営主体は地方公共団体か医療法人に限られる。主に医療ケアやリハビリを必要とする要介護1以上、65歳以上の高齢者が対象。在宅復帰を目指す施設なので、病状の安定した人に医学的管理のもと、リハビリに重点を置いた介護を提供する。理学療法士や作業療法士によるリハビリテーション、栄養管理、食事、入浴などのサービスが受けられる。入所期間は原則3カ月だが、回復が十分でなかったり、家族などの受け入れ体制が整わないなどの理由で、その期間を超えることもある。
医師が常勤、看護師は24時間常駐している施設が多く、胃ろうなどの経管栄養、気管切開、インシュリン注射、点滴などの医療処置に対応することができる。個別計画に基づいて専門家によるリハビリを受け、在宅復帰に向けて着実に機能回復につながる体制が整っている。
しかし、利用期間が限定されているので、あくまで「仮の住まい」にすぎず、特別養護老人ホームなどの入所待ちに利用されることも多い。部屋は多床室が多く、個室や2人部屋は特別室料金が加算される。生活を楽しむレクリエーション企画などは充実していない。
入所一時金は不要で、月額費用は10〜20万円。所得の少ない人には介護保険の制度で住居費や食費が減免される。
以上のように高齢者向けの施設は様々あるが、傾向として、公的施設は入所待ちが多く、民間施設は費用が高い。貯えと健康状態によって、どんな施設が自分によいのか、情報収集をおすすめする。それぞれの施設の特徴をよく理解して検討することが大切だ。
(P.120~P.121記事から抜粋)