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来年の統一地方選に出馬するヘイ卜政党、日本第一党の正体 (ジャーナリスト 安田 浩一)

季刊『社会運動』2018年10月【432号】特集:ヘイトスピーチは止められる差別のない社会をつくろう

 結成からの約7年間は、まさに在特会の"高度成長"だった。ネットで差別をばらまき、街頭でヘイトスピーチを絶叫し、ときに犯罪にも手を染めてきた。
 京都朝鮮第一初級学校に対する襲撃事件(09年)(56ページ参照)、徳島県教職員組合への乱入事件(10年)(65ページ参照)などで多くの検挙者を出したことは知られていよう。また、東京・新大久保、大阪・鶴橋などの在日コリアン集住地域をはじめ、全国各地で差別デモ(在日コリアンの排斥を訴えるデモ行進)を繰り返した。
 在特会は紛れもなく差別主義者の象徴的存在だった。
 しかし、13年を過ぎたころから勢いにも陰りが見えてくる。デモ動員数が減少し、行動回数も減ってきた。
 原因として考えられるのは、まず、差別デモに反対する「カウンター」に集まる人が増えてきたことだ。「カウンター」には様々な人々が参加した。左翼もアナーキストも一部の右翼も、そして何よりも「差別反対」を掲げ、どこの党派にも属すことのない一般の人々が多数、在特会の差別デモと対峙した。
「レイシストは帰れ!」「差別をやめろ!」
 デモ隊のヘイトスピーチは、常にカウンターの罵声と怒声、あるいは無言の視線に迎え撃ちされる。これが嫌で差別デモに参加することをやめた在特会員を私は知っている。
 また、日本社会の一部からも、ヘイトスピーチに関して「規制すべし」との声が出るようになった。当然だ。差別デモは地域に分断と亀裂を持ち込むものだ。政治的立場を超えて、これに反対する人は多い。この動きは16年に成立施行されたヘイトスピーチ解消法(注)にもつながっていく。
 また、在特会のヘイトスピーチに関して、損害賠償などを求める裁判も起きた。
 そうしたなか、14年に桜井は突如、在特会会長の座を降り、同会も脱会した。桜井は「新陳代謝の必要性」を脱会理由としたが、これは様々な憶測を生んだ。「金をめぐるトラブルがあった」「会員との間に深刻な対立があった」─などとわざわざ私に吹き込んでくる会員も一人や二人ではなかった。
 当時、ある幹部会員は私にこう告げた。
「要するにヘイトスピーチ裁判をはじめとする社会的圧力への対応だと聞いています。ネットや街頭だけでない、新たな方向性を模索したのでしょう」
 果たして、その「新たな方向性」こそが、日本第一党の結成として表れたのである。
 彼らはネットや街頭だけでなく、「政治」を目指したのであった。いや、ヘイトを政治に持ち込もうと考えたのである。

注 「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(2016年6月3日施行)、通称「ヘイトスピーチ解消法」と呼ばれる。

(P.19~P.20記事から抜粋)

 

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