ワーカーズ・コレクティブがつくる「福祉クラブ生協」(神奈川)
介護保険事業が始まる10年以上前にスタート
1988年に横浜市港北区で、300世帯の組合員に消費材の配達をスタート。すでに草むしりなどの家事支援サービスも始まっており、1989年に法人格を取得し福祉クラブ生協として正式に事業を開始した。
「組合員どうしのたすけあいの仕組みなので、同じ地域の中にサービスをする側と、される側、双方の組合員がいなければ始まりません。ただし両者は対等平等の関係にあり、提供者と利用者(お客)の関係ではないのです。この点が、サービスを提供する事業者である社会福祉法人との根本的な違いです」(関口顧問)
契約して料金を払えば誰もが利用できる社会福祉法人と違って、福祉クラブではサービスの提供者も利用者も福祉クラブの組合員になる。設立当初は1020世帯だった組合員は、毎年平均1000世帯ずつ増えていき、10年後の1998年には1万世帯を超えた。組合員の増加にともない、港北区だけでなく神奈川区や鎌倉市など、各地に組織が広がり、新たな福祉サービスが続々と生まれていった。
「自分たちが年を重ねても、今までどおり住み慣れた地域で暮らし続けるのが福祉クラブの目的です。ただし、豊かな福祉サービスを実現できるか否かは、組合員活動の結果でしかありません。組合員を増やすことで必要なサービスを自分たちでつくり、さらに将来、自分たちがお世話になる人を育てていくのが福祉クラブの仕組みです」
高齢者が主人公の協同組織を
現在の福祉クラブの組合員、約1万6500世帯のうち半数が65歳以上であり、次第に高齢化が進んでいるが、それは設立当初から想定していたことだった。
「福祉クラブの母体となった生活クラブ生協の組合員の年齢構成は、1980年代まで30~40代が中心でした。若い世代が生活クラブにどんどん加入する一方、年齢を重ねた組合員は辞めてしまうケースも多かったのです」
そこで、高齢者も脱退せずに活動を続けられる生協を目ざして福祉クラブは誕生した。高齢者にも活動の場があり、高齢者自身が主体的に福祉サービスを生み出していく生協である。
「今、福祉クラブの介護施設を利用しているのは、25年前の設立当初に活躍していた組合員です。いつか自分が利用者になる、他人に対するお世話が将来に返ってくるという考えが、福祉クラブにおける『次世代に引き継ぐたすけあい』という思想です」