朝鮮学校の生徒と歩む、共生社会への道 (ビビンバネッ卜)
日常的・継続的に朝鮮学校と交流する
終了後、ビビンバネットの方々と神奈川朝鮮中高級学校の金燦旭校長に話を聞いた。
ビビンバネットの成り立ちは、2010年に遡るという。メンバーの裵安さんは言う。「朝鮮学校への授業料無償化除外(68ページ参照)に対する問題をどうにかしたいということで、多文化共生をテーマに活動しているNGOなどの有志が集まり、シンポジウムを開きました。それまで朝鮮学校の問題というと、労働組合や、旧社会党の方などが中心で、それ以外の人たちは、ちょっと手を出せない雰囲気があったのですが、みんな『やらなくちゃ』という思いはあって。神奈川のNGOどうしが声をかけ合ってこのシンポジウムを開催しました」
シンポジウムは大盛況だった。「たくさん人が集まって驚くとともに、やはりみんな、思いは同じだったんだとうれしかったですね。その後も、朝鮮学校の無償化除外のことで問題があるたびに集まって、シンポジウムや映画鑑賞会などを開催していたのですが、日常的、持続的に、朝鮮学校と交流する機会を増やしたいということで、13年、朝鮮学校訪問ツアーを企画した際に立ち上がったのが『ビビンバネット』です。神奈川ネットワーク運動(以下、神奈川ネット)とのつながりもそのころからです。年に数回、『共に生きる学習会』を一緒に開催し、幅広い層に参加していただけるようになりました」(丸谷さん)。
神奈川ネットの若林ともこ事務局長も、「参加団体の皆さんの〝実践者〟としての言葉を聞ける機会は、非常に貴重」と話す。
神奈川朝鮮中高級学校の金校長も、ビビンバネットとのこうした連携について、非常に前向きだ。「ヘイトスピーチが激化するなかで、生徒たちは少なからず怯え、ショックを受け、それが自己否定につながってしまう場合もある。親御さんにしてみれば、朝鮮民族の文化や伝統を誇りに日本の社会で活躍していってほしいという思いから、朝鮮学校に通わせているわけですが、そのアイデンティティを全否定されてしまうと、子どもたちは何を信じていいのかわからなくなってしまいます。そうした状況のなかで、今日のように、日本の方と交流する機会を持てるのは、非常にありがたいことなんです。子どもたちが、すごく安心しているのがわかる。自分たちを理解してくれる人は、ちゃんといるんだと。関東大震災時の朝鮮人虐殺事件は、在日朝鮮人にとってはとても重要な話ですが、それを日本の人が一緒に、同じ目線で考えてくれるということが、日本社会への信頼、希望にもつながっていく。今後も積極的に、交流の機会を持ちたいと考えています」。
最後に、ビビンバネットの今後の展望をうかがった。
「私たち大人が主導する企画ばかりではなく、今回のように、子どもたちと一緒に作り上げる企画を増やしていきたいですね。まずは朝鮮学校のこと知って、意見を交換、共有をすることが、多文化共生の第一歩ですから」
(P.90~P.91記事から抜粋)