生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

03:シェアリングエコノミーのオルタナティブな可能性(市民セクター政策機構理事 宮崎 徹)

季刊『社会運動』2019年1月【433号】特集:0円生活を楽しむ―シェアする社会

生活協同組合への期待


 風呂敷が広がりすぎたようだが、小論を踏まえたささやかな提案をして締めくくりとしたい。それは生活クラブをはじめ生協陣営がこのシェアリングエコノミーの分野に積極的に取り組んではどうかということである。生協運動はいうまでもなくソーシャルキャピタルと相互増進関係にある。これまで生協は豊かなソーシャルキャピタルを蓄積してきている。端的にいえば、シェアリングエコノミーの肝である信頼のネットワークという大きな財産を持っているのである。これは大変なアドバンテージだ。
 組合員の間で遊休している資源を融通し合える可能性は世間一般よりかなり高い。稼働率の悪い車だけではなく、バーベキューセットのようにたまにしか使わないもの、自分には不用になったが他の人には役立ちそうなもの、あるいは料理などのさまざまな技能、改めて目を向ければいろいろあるのではないだろうか。近隣に住んでいる者同士であれば、モノやサービスのやり取りは比較的簡単だ。情報をやり取りするプラットフォームを作り、適切な手数料を設ければ、事業として十分成り立つと思われる。
 このようなモノやサービスの組合員同士のやり取りが活発になれば、地域でのお付き合いも深まり、地域的連帯が強化されることにもなろう。とりあえず組合員間の事業となるだろうが、基本スタンスとしては世間一般に開かれた仕組みでなければならない。シェアリングエコノミーが社会全般に広がることが目標だからだ。付随的には、そういう活動のなかから組合への新加入があるかもしれない。
 いうまでもなく、既存組合員間の信頼関係はいっそう深まるであろう。モノやサービスのやり取りはコミュニケーション行為そのものであるからだ。こう考えれば、シェアリングエコノミーは生協にとっても有望で、価値のあるフロンティアであるといえる。
 シェアリングエコノミーの広がりは、まだささやかではあるが、最近ではまれな明るい話題かもしれない。

(P.45~P.47記事抜粋)

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