03:TPPは、薬剤にどんな影響を与えるのか(日本医療総合研究所研究委員 寺尾正之)
TPPと薬の特許期間の延長問題
─TPPの薬への影響は、どうなっているのでしょうか。
TPPは、2016年2月に日本やアメリカを含む12カ国で合意されました(TPP12)。しかし、アメリカがトランプ大統領になった直後の17年に「離脱」。その後、残りの11カ国で合意され、2018年12月発効しました(TPP11)。
これから、「日米貿易交渉」が行われますが、TPP12より強い要求をアメリカから突きつけられると思われます。この日米貿易交渉では、「サービス分野が含まれる」と共同声明に書かれています。このサービス分野にあたるのが、日本では健康保険なのです。そのなかで、とくに影響を受けるのは薬だろうと思います。
まだ議論は進んでいませんが、今後「TPP12での合意事項や、日米両政府で合意したサイドレター(文書)を出発点に協議が進むのでは」と、私は心配しています。
日本では1年間に保険証を使って受ける医療費の総額は42・2兆円です。そのうち、薬剤費は10兆円を超えています。アメリカやヨーロッパのメガファーマは、日本の皆保険制度は国の制度なので「巨大かつ安定している“市場”」ととらえていると思います。そして具体的には、公定価格への関与を強めて、なるべく薬価を高値にすることと、特許の期間と新薬のデータ保護の期間をできるだけ延ばして、利益を最大化させようとするでしょう。
(P.38~P.39記事抜粋)