01:「よく効く薬」とは何か-薬の基本を学ぶ (薬剤師 深井良祐)
風邪薬はなぜ「飲んでも意味がない」のか
それでは要注意の薬について、具体例をあげてみよう。まず、「飲んでもあまり意味がない薬」の代表格といえば「風邪薬」だ。風邪の主な原因はライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなどのありふれたウイルスだが、どのウイルスに対しても特効薬は開発されていない。つまり主原因をたたくことはできない。風邪薬とは、頭痛や鼻・のどなどの「症状」を和らげる成分を配合した薬で、体を少し楽にして安眠を促し、体力を回復させる手段の一つ。その結果、人間の体に備わっている免疫機能が回復し、ウイルスに打ち勝つことができるという考え方だ。
「そもそも、ウイルス感染によって風邪を引いたときの発熱や咳は、体の免疫機能が頑張っている証拠。体温を上げることでウイルスの活動を鈍らせ、咳や鼻水でウイルスを排出しようとしているわけです。それを薬で無理に抑えてしまうと、ウイルスの活動がなかなか弱まらず、体に長くとどまる。結果、風邪が長引くことにつながります」
一つ気を付けたいのは、肺炎や溶連菌感染症など、症状は風邪に似ているものの、原因がウイルスではなく細菌にあるケースだ。細菌感染症なら抗生物質の投与が効果的だが、ただの風邪(ウイルス感染症)に抗生物質を投与しても意味がない。もちろん、副作用もある。抗生物質は病気の原因となる細菌にだけピンポイントで効くわけではなく、様々な細菌にランダムに作用する。腸に作用すれば、腸内細菌叢を壊し、下痢が続いたり、腸内に炎症を起こすこともある。
「39度以上の高熱がなかなか下がらなかったり、咳がひどくて眠れないなどの激しい症状がある場合は、医療機関を受診し、適切な薬を処方してもらうのがベター。そうでない場合は、自分なら自宅静養ですね。薬は飲まず、水分、栄養、睡眠をしっかり取ることに専念します」
(P.63~P.64記事抜粋)