02:「治療より快復」を支援する草の根の活動-精神科の多剤大量処方を被害者の立場から考える(全国オルタナティブ協議会代表 中川 聡)
日本の精神科医療で蔓延する過剰投薬による薬物中毒と副作用
厚生労働省の推計によると、うつ病や双極性障害(そううつ病)、統合失調症などの精神疾患で治療を受けている人は、全国で300万人超。実際にはもっと多いのではないかと言われている。
「驚くことに、精神科では日常的に10から20種類の薬が服用されています。多剤大量処方が社会的に問題視され、厚労省、実質は中央社会保険医療協議会(中医協)という診療報酬の審査会が少しだけ規制をかけましたが、精神科病院は対象外というザル規制でした」
改善されるどころか、多剤大量処方は悪化していると中川さんは言う。「1970年代まではうつ病は薬物治療を行わなくても比較的回復しやすい病気だったのが、抗うつ剤の登場とともに症状が慢性化するようになりました。薬物治療がかえって状態を悪化させていると推測されます。
何より問題なのは、うつ病患者に抗うつ剤+抗不安薬・睡眠薬+抗精神病薬『エビリファイ』(または『ジプレキサ』)といった『カクテル処方』が蔓延していることです。適応の違う4種類の薬をいっぺんに出すなんて、人体実験をやっているようなものでしょう。薬の治験はほとんど単剤で行われており、併用による効果や副作用は確認されていないのです。2016年に、睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬のカテゴリーごとに2剤までという処方規制が設けられました。しかし諸外国の基本はあくまで単剤です」。単剤処方なら、薬害の原因も究明しやすいからだ。
統合失調症は、神経伝達物質の一種であるドーパミンの過剰分泌が原因とも言われ、その抑制に「リスペリドン」(販売名‥リスパダール)が使われる。1錠で昔の「クロルプロマジン」の100錠分といわれ、かつての100倍もの強い薬を飲んでいることになる。そのようなリスペリドンや「オランザピン」(販売名‥ジプレキサ)などの抗精神病薬や抗うつ薬によって頻発する副作用として、アカシジアと呼ばれる症状がある。イライラ、不眠、不安、一時もじっとしていられない、手が震えるなどで、それがひどくなると自殺につながるおそれがあると報告されている。
全国オルタナティブ協議会には、「最初はただの不眠とか不安、不調で精神科を受診したのに、医師から長期服用して大丈夫な薬と言われ、イギリスで禁止されているベンゾジアゼピン系抗不安薬『ソラナックス』を処方された」という女性の体験談などが寄せられている。
(P.71~P.72記事抜粋)