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「平和の少女像」に込められた想いを考えてみよう(一般社団法人 市民セクター政策機構 代表専務理事 白井 和宏)

季刊『社会運動』2019年10月号【436号】特集:「平和の少女像」が示す希望 韓国と日本の歴史を直視する

 日韓関係が悪化している。日本政府は韓国に対する輸出規制を行い、韓国側もGSOMIA(軍事情報包括保護協定)を廃棄。日本製品の不買運動も広がっている。安倍政権は強硬姿勢を崩さないが支持率はさらに上昇。テレビも雑誌も「韓国たたき」が商売になるとエスカレートする一方だ。
 ただし日韓関係悪化の原因は、安倍政権とマスコミだけにあるのだろうか。より本質的な問題は、多くの日本人が、「韓国は、なぜいまさら『慰安婦』や徴用工問題を蒸し返すのか。韓国への賠償は決着済みのはずなのに」と信じて疑わない点にある。
 
日本は「戦争の被害国」なのか
 
 第二次大戦後、私たちは戦争の「被害者」として自己認識してきた。広島・長崎への原爆投下、東京大空襲、2万人が玉砕した硫黄島、沖縄地上戦の無差別攻撃、満州引き揚げ者の苦難、特攻隊の悲劇……。210万を超える軍人が戦死・餓死し、50万~100万の民間人が命を失った引き替えとして、「平和な日本」が実現したと考えてきた。しかし他方で、日本が「加害者」であったという認識を持っていただろうか。朝鮮半島を植民地にしてきた歴史をどこまで知っているだろう。2000万人以上とも言われる死者を出したアジア・太平洋諸国の悲劇について、どの程度、知っているだろう。
 朝鮮半島は1948年に樹立した韓国と北朝鮮とに分断され、二国は朝鮮戦争を戦った。休戦後も韓国では日本が支援する独裁政権が長く続いた。韓国で民主制が定着したのは、1987年6月29日の「民主化宣言」の後、大統領の直接選挙制が実現してからと言われる。ただしいまも、かつての独裁政権を支持する「右派(親日派)」は影響力を持ち続けている。
 だからいま、文在寅大統領たち「進歩派(民主派)」が闘っているのは、「大日本帝国」を支えてきた韓国内の右派(親日派)政治勢力であり、韓国市民が抗議しているのは、大日本帝国の植民地政策を「清算済み」とする日本の右翼政治家なのである。こうした韓国内の政治構造を日本のメディアはほとんど伝えない。
 
“心からの謝罪”とは真逆の暴論が続く現在
 
 ドイツによるポーランド侵攻から80年を迎えた2019年9月1日、ドイツのシュタインマイヤー大統領は、ポーランドで行われた式典において、「ドイツの犠牲者となったポーランド国民の前に私は頭を下げ、過去の罪の許しを請う。我々ドイツ人がポーランドに与えた傷は忘れない」と謝罪した。ところが、日本の政治家は、「慰安婦は公娼だった」「日本が韓国を併合したことによって韓国経済は発展した」というデマを流し続けている。韓国の人びとが求める“心からの謝罪”とは真逆の暴論である。
 さらに日本の極右政治家は「『慰安婦像』は反日の象徴である」と決めつけ、美術展での「展示は認めない」と公言した。だが韓国では「平和の少女像」と呼んでいるのはなぜなのかご存じだろうか。韓国を「反日」と決めつける前に、加害者であった日本の歴史を振り返ってみようというのが本書の目的である。
(P.8~P.9記事全文)

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