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市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

4.施設を出た子どもたちの自立を支えて( ちばアフターケアネットワークステーション(CANS)管理者兼相談員 齊田由美)

季刊『社会運動』2020年4月【438号】特集:子どもの命を守る社会をつくる

自立生活のサポートが安心感に


─施設を出た子どもへのアフターケアは、どういう背景から取り組まれてきたのでしょうか。また「ちばアフターケアネットワークステーション(CANS)」が設立された経緯をお聞かせください。


 児童養護施設や自立援助ホーム、養育里親家庭などで生活している子どもたちは、原則18歳、延長をしても22歳で支援が終了するため、いずれは施設などを出て社会的に自立をしなければなりません。しかし、いろいろな困難を抱えていたり、保護してくれる肉親や大人が身近にいないことが多いですから、自立して生活していくことは簡単ではありません。
 これまで、社会で頼るところがない子どもたちのフォローは、施設でその子を見ていた職員が個人的に行っていたのです。例えば、今日食べるものがないと言われれば、自腹を切って買ってあげるという形で対応していました。しかしそれには限界があります。
 アフターケアとは、施設や里親家庭を出た子どもたちが、将来に希望を持って、失敗してもやり直せるという安心感を持って、自立・自律した社会生活を送れるようにサポートすることを目的にしています。2002年の児童福祉法改正によって支援が明文化されて、都道府県・政令市・児童相談所設置市による補助事業として「退所児童等アフターケア事業」が制度化されました。しかし、千葉県ではまだ実施しているところがなく、児童養護施設や自立援助ホームを運営する社会福祉法人生活クラブ(生活クラブ風の村)でも、取り組みたいと千葉県に働きかけました。そして県の委託事業を運営するために、CANSが設立されました。2016年9月に準備室ができて、17年4月から活動を始め、現在は3年目です。

当事者からの相談と支援者の育成


─日常的にはどのような業務を行っているのでしょうか。


 千葉県内外を問わず、施設を出て自立を目指して生活している子どもたちからの相談に対応しています。例えば「体調が悪くて病院に行きたい」とか、「電気を止められて困っている」というような生活相談が携帯電話にメールやLINEで届きますので、その都度それに対応していくというのが主な仕事です。相談内容に応じて、病院やハローワーク、市役所などに同行したりしています。
 また、2019年度は児童養護施設やファミリーホーム(注)、里親家庭にいる子ども向けに、施設から卒園した方の話を聞いて、将来のことを考える場として「エールを送る会」を開催しています。
 それから2カ月に1回、支援者向けに「アフターケア勉強会」を開催し、金銭トラブルや精神疾患を抱える方の自立など、施設を出た後に起こりがちな問題について学んでいきます。
 県内の児童養護施設の協議会の部会や、自立援助ホームの連絡会の定例会に参加して情報収集や関係づくりもしています。

(P.76~P.78記事抜粋)

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