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市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

5.「特別養子縁組」で子どもと養親をつなぐ(特別養子縁組あっせん事業部ベビースマイル 相談員・あっせん責任者 湯浅美和子 相談員 鈴木久美子)

季刊『社会運動』2020年4月【438号】特集:子どもの命を守る社会をつくる

様々な仕組みで整備される養育の制度


─特別養子縁組あっせん事業部ベビースマイルが設立されるまでの経緯を教えてください。

鈴木 まず「養親縁組」と「里親制度」の違いを含めて、社会的養護の制度の話から始めてもよろしいでしょうか。
 社会的養護とは、様々な事情で保護者と暮らすことができない子どもを公的な責任で社会的に養育することで、大きくは児童養護施設などでの施設養育と、里親や養子縁組などによる家庭養育とがあります。
 里親制度というのは、里親希望者が自治体の研修を受け、里親として登録し、一時的に(短期・長期もあり)子どもを預かるもので、実親と子どもの親子関係には何の変更もありません。また里親には子どもを育てるための生活費などが措置費として自治体から支払われます。
 それに対して、養親とは養子縁組に伴うもので、養親と養子は法律上の親子関係になります。子どもの年齢を問わず、養親と実親が戸籍上に併記される「普通養子縁組」と、6歳未満(2020年4月から15歳未満に変更)の年齢制限のもと、実親との親子関係がなくなって養親との親子関係だけとなる「特別養子縁組」の二つがあるのです。こちらは親子関係ですから、自治体から措置費が支払われることはありません。養親が自分の子どもとして自分たちのお金で育てていくことになり、原則、離縁はできません。

湯浅 生活クラブ風の村では、2019年度から特別養子縁組あっせん事業を始めました。
 私はNPO法人「ちばこどもおうえんだん」(15年設立)に所属して社会的養護の子どもたちを応援する活動をしていますが、その一環として、里親家庭を支援する事業も行政の委託でやっていました。委託を受けるためのプレゼンの中で「特別養子縁組についてはどう考えますか」という質問がありました。当時、私はまだ詳しいことを知らず、今後の課題として考えたいと答えました。その後、いろいろな勉強会に参加するなかで、例えば養子縁組の成立件数は、自治体では年間3〜4件といったレベルでしたが、全国で20ほどある民間団体では年間500件近くもあるなど、相当な差があり、必要とされていることを知りました。また、里親でも施設でも同じように、一定の年齢になれば自立を余儀なくされ、そうした子どもたちを支援するアフターケアの活動(CANSの記事・76ページ参照)も必要になりますが、養子縁組の場合は一般の家庭と同じですから、年齢で一律に独立を促されることもありません。社会的養護の中で、新生児の時から、特定の大人(養親)からの温かい愛情を受け養育される子どもたちを増やしていくことは社会的にも必要とされています。そこで、生活クラブ風の村の独自事業として立ち上げることになりました。
 2016年の児童福祉法の改正で、「家庭養育優先」の理念が盛り込まれたので、その一端を担う特別養子縁組あっせん事業は国もあげて進めているところです。法改正を受けて公表された「新しい社会的養育ビジョン」では、年間500件くらいある現在の養子縁組の成立件数を、倍増する目標が掲げられています。
 このあっせん事業は、以前は届出だけで始めることができましたが、2016年に新たな法律(民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係わる児童の保護等に関する法律)ができて、都道府県か政令指定都市の許可が必要になりました。生活クラブ風の村では、18年度末から事業開始に向けて準備を進めて、千葉市から許可が出たのが19年10月31日ですから、本当にスタートしたばかりの事業です。

(P.84~P.86記事抜粋)

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