1.自治体の温暖化対策と市民の役割(特定非営利活動法人気候ネットワーク上席研究員 豊田陽介)
地方では CO2削減だけでなく持続可能なまちづくりを目指している
─小規模な自治体では再生可能エネルギーを使って、積極的にまちづくりをするところがあると聞きます。
そのような自治体は増えていて、なかでも長野県の飯田市はよく知られています。日射量に恵まれた地域で、市民らが出資して、住宅や公共施設の屋根などに太陽光発電を設置しています。最近は新電力会社を作り、発電した電気を地域に供給するエネルギーの地産地消にも取り組んでいます。 CO2を減らすと同時に、雇用も生み出しているのです。
「持続可能な循環型森林経営」をテーマに、バイオマスによるエネルギー自給に力を入れているのは、北海道の下川町です。いままで木材として使えず捨てていた切れ端や根や樹皮をチップにした燃料でお湯を大量に沸かし、配管をつなげて地域熱供給システムを導入しています。現在は公共施設30カ所に熱を供給、公共施設の熱需要の60%に達しています。
これによって地域内の燃料費を大幅に削減できたのと同時に、林業に副収入をもたらしました。さらに、山林が適切に管理され林業復興の仕組みの一つになっています。住民参加を積極的に進めて持続可能なまちづくりを実践する人口3200人の下川町では、移住者も多く人口減少に歯止めがかかっています。
同じように、より小規模な形で取り組んでいるのが人口1400人あまりの岡山県の西粟倉村です。映画『おだやかな革命』(http://odayaka-kakumei.com)でも紹介されていました。村内で伐採された薪や木材チップによるバイオマス発電や、地域熱供給を実施するほか、水力発電も進めています。古くなった村営の小水力発電の水車を新しくして、2014年から運用を開始しています。工事に約3億円かかりましたが、売電によって村の収入が年間5000万円くらい増加しました。
(P.88~P.89記事抜粋)