生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

2.自然エネルギー100パーセントの社会をつくる キーワードは「提携」(東北芸術工科大学教授 三浦秀一)

季刊『社会運動』2020年7月【439号】特集:いまなら間に合う!気候危機

エネルギー産地との提携が未来を拓く

─地域と協調し、自然エネルギーを進めている取り組みはありますか。


 注目したいのが生活クラブ生協の自然エネルギーに関する活動です。以前から、原発のない社会づくりを目指して、自然エネルギーを「つくる」、エネルギー消費を「減らす」、自然エネルギーを「つかう」に取り組んでいます。

●生活クラブ風車・夢風
 自分たちが使う電気を自分たちでつくるというチャレンジの一つが、2012年に秋田県にかほ市に建設した「生活クラブ風車・夢風」です。当時は固定価格買取制度がなく、生活クラブの事業所で使用する電力を供給することからスタートし、現在は全国の生活クラブ組合員およそ1万5000人が利用する「生活クラブでんき」の電源として生活クラブエナジーと需給契約を結び、電気を供給しています。2019年度の出力は1990キロワット、発電量は476万6890キロワット時です。
 夢風は自然エネルギーを供給するだけの施設ではない広がりを見せています。生活クラブとにかほ市は食とエネルギーを通じた都市部と地方との新しい関係づくりを目指して、「地域間連携による持続可能な自然エネルギー社会づくりに向けた共同宣言」を締結しました。
 にかほ市は他の自治体と同じように、高齢化や人口減少、農業の衰退などが課題です。そこで、夢風による売電収益をにかほ市の課題解決に活用して、交流事業を進めました。組合員が現場に足を運び、にかほの生産者と一緒ににかほの特産品のイチジクやハタハタを使った「イチジクの甘露煮」「ハタハタのオイル漬け」、タラのしょっつるを使ったラーメン「タラーメン」などの新商品を共同開発したのです。それらは「夢風ブランド」と名付けられ売上も上々。その他、加工用トマトや豆乳用の大豆などの農産物の栽培も始まり地元に大きな経済的効果を生み出しています。
 にかほ市には20基以上の風車が立っていますが、その中でも生活クラブの風車である1本は地元の人とって特別のものになっています。

●庄内・遊佐太陽光発電所
 もう一つが、生活クラブが山形県庄内地域との長年の提携関係をふまえて推進している庄内におけるFEC自給圏ネットワーク(注)の形成の中で建設された「庄内・遊佐太陽光発電所」です。
 地元の提携生産者や生活クラブなどで事業を立ち上げ、山形県遊佐町の31ヘクタールの広大な土地に6万7000枚のソーラーパネルが並んでいます。
 用地所得は地権者をはじめ地域住民が、生活クラブのいままでの環境に対する取り組みや今後の環境への配慮に理解を示した結果です。市民のメガソーラーとして、2019年5月から本格稼働しています。
 出力は18メガワット、発電する電気は年間1万8000メガワット時で一般家庭の年間電気消費量に換算すると、約5700世帯分の電力です。これによって年間9200トンの CO2を削減できることになります。
 さらに特筆すべきは、この発電事業で得られた剰余金の一部は酒田市に創られた「庄内自然エネルギー発電基金」に毎年寄付され、新たな地域事業の立ち上げなどを助成することです。生活クラブ連合会の加藤好一会長(当時)は、「地域の自然環境を生かして得られた収益を地元に返したい」と話しています。酒田市と遊佐町を対象に移住・定住など庄内の持続可能な地域づくりに活用されていきます。2020年2月に第1回の寄附として1000万円が渡されました。

(P.99~P.101記事抜粋)

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