4.いまの世界のシステムを根本から変える試み
①北欧はなぜ環境先進国なのか(北欧ジャーナリスト 鐙 麻樹)
エコ市民は幸福度が高い?
女性にとって働きやすい国、育児がしやすい国……。北欧といえば多くの国際調査で際立つことから、他国とは質が異なる「北欧例外主義」という言葉さえ生まれている。国連関連の団体による「世界幸福度調査」でもトップ常連国だ。2020年度版レポートでは、1位フィンランド、2位デンマーク、4位アイスランド、5位ノルウェー、7位スウェーデン。日本は156カ国中62位というニュースを聞いて、気が抜ける人もいるだろう。英語で200ページというボリュームなので、実際に読んでいる人は少ないという印象を私は受けているが、この中からあるデータを紹介したい。
なにを基に幸福度は測られているのだろうか。社会的支援、人生の選択の自由度、寛容度、腐敗度などの要素に加え、私たちが自然と触れ合うことでホッとする癒し効果も評価対象となっている。例えば、レポートによると徒歩や日光浴で2%、庭仕事や野鳥観察などで4?7%私たちの幸福度はアップする。著名者らが「北欧の幸せ(ノルディック・ハピネス)」と名付けたものには、どんな秘密があるだろう。
北欧の幸せとは、世界情勢や未来の世代のことを気にかけ、他者の福祉(幸福や健康)を願うこと。未来のための行動を起こすために、他機関や他者を信頼することだ。つまり、未来の子どもたちのために、環境や気候活動をすることで、市民の幸福度はあがるという。そういえば、北欧の国ではどこも市民は環境問題に関心が高い。私が現地で取材した誰もが、気候危機という困難な課題に苦悩しているというよりも、笑顔で楽しそうに解決策を模索している。私も現場で元気をもらっている。
レポートでは「持続可能な開発目標」(SDGs)と市民の幸福度の関わりも評価対象だ。幸福度上位の国々には共通点があり、どこもSDGs達成のために積極的な取り組みをしているという。多くの目標は取り掛かっている段階で幸福度につながるからだ。しかし、SDGsには不利な点もある。目標12「つくる責任 使う責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」においては、経済的な影響が出るので、特に消費大国では一時的・短期的にウェルビーイングが下がるのだ。だが、未来の世代の生活の質につながるので、長期的にはウェルビーイングが向上する。だから、綺麗な地球のために代償を払う意思がある人々がいる。
いずれにせよ、エコ市民でいることと幸福度に関係があるとは、意外としっかり実感していない人も多いのではないだろうか。幸福の国々とされる北欧では、市民はどのような活動をしているのだろう?
(P.119~P.121記事抜粋)