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あなたが「下流老人」になる日(NPO法人 ほっとプラス 代表理事 藤田 孝典)

季刊『社会運動』 2015年10月号【420号】特集:あなたが「下流老人」になる日

年金の掛け金を払っていても「下流老人」に

…… 「高齢者の9割が下流化する」という主張には、どのような根拠があるのでしょうか。

 私も、実際に年金額を試算して驚きました。まず知って欲しいのは、一般的に、「サラリーマンの平均年収は480万円」と言われます。しかし、実は、年収1000万円を大きく超える人もいるので、本当の中央値は300万円程度です。私たちは数字のトリックにごまかされているのです。
 仮に、年収400万円のサラリーマンがいるとしましょう。その人の年金支給額を、現在の基準にしたがって試算すると、月額15万~ 16万円になります。ところが今後は、年金の支給基準が10%、20%と下がる見込みですから、20代から50代で年収が400万円程度の人は、月額13万~ 14万円の年金で暮らすことになります。この額は首都圏の生活保護基準と同じレベルです。
 したがって、40年間、一生懸命、普通に勤め上げて、年金の掛け金をちゃんと払ってきた人でも、年金収入だけで暮らそうとすると、その生活水準は生活保護と同様のレベルということになります。貯金や資産、家族の助けなどの様々なセーフティネットがないまま、もしも病気になったりすれば、とたんに生活保護に頼らざるを得ない状況に陥ってしまいます。

子ども世代の貧困で、一家が総崩壊

…… これからの老後は本当に暗くなりそうですね。

 若者たちはもっと大変ですよ。例えば、70代のCさん夫婦は娘さんと三人暮らしです。娘さんは中学生の頃のいじめが原因で不登校になり、その後うつ病を発症し、今でも病気と闘っています。Cさんは小さな町工場で定年まで働き、家も買いました。給料はそれほどよくなかったのですが、当時は不満もなく暮らしていました。しかし低賃金だったので、年金は夫婦で月17万円でした。ところが退職後は生活費と娘さんの医療費で月に26万円かかるため、貯蓄は底をついてしまいました。今は家を売ったお金を切り崩して生活していますが、いつまで持つかわからない状況で不安な日々を送っています。
 また、子どもがブラック企業で働いてうつ病になるケースも年々増えています。非正規雇用が広がり、ワーキングプアや引きこもりなど、成人した子どもを老親が養わざるを得ない場合もたくさんあります。
 息子や娘から仕送りを受けて、ようやく親の生活が成り立つような年金額なのに、子どもたちが親に頼らないと暮らせない状況になってしまうと、一家は総崩壊していきます。
 若年層のワーキングプアが、1億総老後崩壊を招くと言っても過言ではないでしょう。20代、30代の若者の40%が非正規雇用ですから、今後は、さらに大きな社会問題になるでしょう。

 

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