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3.「ステイホーム」と少女たち(一般社団法人Colabo代表・社会活動家 仁藤夢乃)

季刊『社会運動』2020年10月【440号】特集:コロナ下におけるマイノリティ -子ども、生活困窮者、障がい者、外国人-

新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛や休校などにより、さらなる苦境に立たされた少女たちがいる。親からの支配や虐待などにより、「家」が安心できる場所ではない中高生だ。逃げ場だった学校やネットカフェは休業。アルバイト先では勤務日数を減らされ困窮。行き場をなくして、買春者やJKビジネスなどの性売買の斡旋業者にからめとられてしまう少女も少なくない。そんな10代女性を支える活動を行う仁藤夢乃さんに、このとき少女たちに何が起こっていたのか、そこから見えてきた、構造的な問題点について聞いた。

 

急増した
居場所のない少女たち

 

 親の支配や、暴力、ネグレクトといった虐待などにより、家にいたくない・いられない少女たち。新型コロナウイルスの感染拡大は、そんな少女たちを危機に追い込んでいた。3月2日以降、政府の休校要請を受けて小中高校が臨時休校に。そして4月7日の緊急事態宣言で在宅勤務が推奨されると、親子で家にいる時間が長くなり、虐待などのリスクは一気に高まった。
 仁藤さんが代表を務めるColaboでは、2011年の設立以来、貧困や虐待、いわゆる「JKビジネス」や児童買春などで性被害にあった少女たちを支えてきた。コロナの影響で、その活動にも自粛要請がかかる可能性があったが、「こんなときこそ、私たちが活動すべきだと考え、4月からの2カ月間、緊急ステイ先を確保し、支援体制を広げました。ホテル経営をしている企業から支援の申し出があり、緊急事態宣言が出た4月7日からは、さらに受け入れ体制を拡大。20代の女性への宿泊支援や食費の緊急的な支援も行い、2カ月で260泊、およそ40人の方にホテルを提供しました。定期的に開催しているバスカフェは、国からの一斉休校やイベント自粛要請を受けて一度は活動を休止しましたが、医師や行政に相談し、体制を整えて再開しています」(仁藤さん 以下同)。
 「バスカフェ」とは、10代女性が無料で利用できる移動カフェ「Tsubomi Cafe」のことだ。1カ月に数回、夜の新宿歌舞伎町または渋谷にロゴの入ったピンク色のバスを停め、テントを設営し、外からは見えないように配慮しながら食事や飲み物を提供。Wi-Fiやスマホの電源も無料で利用することができ、バスの中では生理用品などの生活必需品や、衣類、化粧品、コンドームなども提供している。
 「昨年の相談者数は591人(うち本人からの相談は527人)でしたが、今年は3月に学校が休校になってから、相談数が急増。6月末の時点で、すでに300人以上の相談がありました。内容は多岐にわたりますが、多いのはやはり、虐待に関するもの、性暴力や性的搾取の被害、生活困窮についてですね。10万円の特別定額給付金に関する相談も多かったです。給付金は、原則、世帯主宛にまとめて支給されるため、そのままでは虐待する親に取り上げられてしまう。国会議員や総務省とも何度も交渉して、なんとか10代でも、家を出ている子が、給付金を受け取れるようになりました。ただ、家にいて虐待を受けている子は、やはり全部親に取られてしまったケースが多かったと思います」

 

「家にいられない」「お金もない」
少女を狙う大人たち

 

 コロナ禍の活動で、仁藤さんたちが新たに出会う少女たちには、大きく分けて二つのパターンがあるという。
 「パターンその1は、親からの虐待など、いろいろな事情で、コロナ以前から家を出ていた少女たち。多くは家を出てから1年以上、ホテルやネットカフェ、危ない男の人の家を転々としながら生活してきた子たちです。日払いのアルバイトでなんとかやってきたけれど、コロナの影響で収入が断たれ、食事もろくに取れず、安心して泊まれる場所もなく困り果てています。話を聞くと、何度も性被害にあっているのに、それも仕方がないと諦めているような子も多いです。
 パターンその2は、以前から虐待を受けているのだけれど、本人は『まだ家を出るほどではない』と思っていたり、その決心がつかなかった子たち。コロナの影響で学校も塾も休みになり、アルバイトも激減。お金がないからファミレスにも行けず、逃げ場を失ってしまったというケースです。それまで何とか外とつながりながら、家での生活を続け、ギリギリのところで耐えていた子たちが、『もう無理!』となって、街に出てきています」
 しかし、そんな10代女性の弱みにつけ込む大人も多い。
 「もう家にはいられない、いたくないと追い詰められた少女たちは、ツイッターなどのSNSに、『家にいたくない』とか『家出したい。誰か泊めてくれないかな』と書き込む。すると、ものの10分で20人以上の男性たちから『泊めてあげる』『サポートします』といった返信が来る。どの子もあとになってこう言うんです。『いちばん危なくなさそうな人を選んだ』って。
 そんなふうに女の子を誘ってくる男の人は、ほぼすべて性加害が目的ですが、少女たちからすれば、そのとき唯一頼れる存在なんですね。加害者からのメッセージを見ると、『ニュースでは危ない男についていって、レイプされるとかひどい目に合う子がいるっていうけど、自分は絶対そんなことはしないので安心して来てください』とか書いてあって。そんなはずないのに。怪しい、怖いと思いながらも、その言葉を頼るしかなく、性被害にあってしまう子は数え切れません」

(p.20-P.23 記事抜粋)

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