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市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

4. コロナ感染拡大下の外国人労働者(国士舘大学文学部教授・「移住者と連帯する全国ネットワーク」副代表理事 鈴木江理子)

季刊『社会運動』2020年10月【440号】特集:コロナ下におけるマイノリティ -子ども、生活困窮者、障がい者、外国人-

切り離し可能で部品のような労働力

 

─鈴木さんは移民政策の研究だけでなく、「移住者と連帯する全国ネットワーク(以下、移住連・注1)」など、NPOでも活動をされています。日本における外国人労働者の状況について、この新型コロナ危機でどんな問題が起きていますか。

 コロナは、より弱い立場の人たちに、より大きくのしかかっています。例えば、非正規雇用の労働者は仕事を失うリスクが高いです。非正規雇用のなかでも特に派遣や請負といった間接雇用の場合は、いつでも切り離し可能な部品のような労働力として使われています。外国人の場合、この間接雇用の割合が非常に高く、日本全体で2・5%程度なのに、外国人労働者は20%を超えています。さらにブラジル人は50%以上、ペルー人は40%強を占めています。こうした人たちが真っ先に職を失っています。
 外国人が仕事をしている分野の一つに観光産業があります。ガイドやホテル従業員だけでなく、リネンサプライ(シール・タオル類をレンタルするサービス)やベッドメイキングなど、観光産業の末端を支える業務に就く人たちも多数います。観光産業が大打撃を受けたことで、2月の半ば頃から自宅待機やシフト減、解雇といった相談を受けるようになりました。
日本全体の雇用が不安定化しているなかで、外国人は、より不安定で脆弱な状況におかれています。そこにコロナの影響が重なって、大変な苦境に陥っています。
 外国人労働者に対するセーフティネットをはじめとした支援については、2008年のリーマンショック当時に比べれば、国も自治体も取り組みを進めています。しかし、外国人には休業手当を支払わないという例は非常に多いです。また、外国人を雇用保険に加入させない事業所も多いため、失業手当を受給できない人もいます。さらに、住居確保給付金など外国人でも使える公的支援制度があっても、日本語が壁になって申請できない人もいます。

 

注1 NPO法人 移住者と連帯する全国ネットワークは、日本に暮らす移民・移民ルーツを持つ人びとの権利と尊厳が保障される社会の実現を目指して、全国レベルのアドボカシーを中心に活動している。国内外の800以上の個人や団体を会員とする組織である。https://migrants.jp/index.html

(p.33-P.34 記事抜粋)

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