5.各地の生活クラブから①“法の狭間”で困窮する学生を支援(公益社団法人フードバンクかながわ)
季刊『社会運動』2020年10月【440号】特集:コロナ下におけるマイノリティ -子ども、生活困窮者、障がい者、外国人-
“法の狭間”で困窮する学生を支援
新型コロナ感染拡大は、アルバイトがなくなり収入が途絶えても、居住地に住民登録をしていないので自治体の相談窓口に行けないという地方出身の学生の存在を浮彫りにした。そこで、自治体や社会福祉協議会、市民団体、フードバンクかながわが連携し、5月より現在まで横須賀市・横浜市・相模原市などの学生を対象に「フードパントリー(食料提供)」を開催してきた。行政・社協によるチラシの配布やSNSの告知、大学からは学生へメールを一斉配信した。
秋田県出身の横浜市立大学の新入生は、「家にも戻れない、大学にも行けない、知り合いもいない、バイトもできなかった。それが、食材の支援を受けることで地域につながりができた」と語った。また同大学の2年生は、「親の収入が減り、自分も塾のバイトの時間が減り困っていた」と言う。こうして、フードバンクかながわからは、横須賀市では218名へ1・8トン、横浜市金沢区では200人に1・5トンの食品を提供した。
相模原市でも学生への食品支援が行われ、フードバンクかながわからは5・8トンの食品を提供した。相模原市の学生支援は食品にとどまらず、市の臨時職員に採用するなど、ユニークだった。
横浜市の生活困窮支援の相談窓口を訪れた人は5月だけで3863人、前年の7倍以上だ。そのため、フードバンクかながわへの食品の支援要請も急増した。年間でみても、フードバンクかながわが2018年に寄贈を受けた量は46トン、提供40トン、19年では寄贈96トン、提供91トンと、例年は5トンの在庫があった。ところが、今年は5月末段階で寄贈78トン、提供72トンと、寄贈・提供量が例年の4倍のスピードで増加している。とくに一人親家庭は状況が深刻で、横浜市では240世帯に8月から21年3月まで食材支援を行う。米に換算すると必要量は9トン強。食品の寄贈元を広げることが必要だ。
食品は様々な個人・事業者から寄贈される。その一つである「フードドライブ」は、例えばイトーヨーカ堂の神奈川県・東京都17店舗やユーコープの店舗、デポー、パルシステムの共同購入で、家庭で余った食品の寄贈を募っている。個人からの寄贈も可能なので問い合わせてほしい。フードバンクかながわは、こうして集められた食品を仕分け、管理をしたうえで、地域のフードバンクや自治体・社協の相談窓口、市民団体、福祉関係施設など、必要としているところに渡す、いわば中間支援組織としての役割を担う。このことを通して私たちは、だれも拒絶されたりせず、貧困ではなく健康で社会の一員として安心して生きられる社会づくりを目指している。
(p.30-P.31 記事全文)