楽しいからみんなが集まる(要町あさやけ子ども食堂 店主 山田 和夫)
みんなが楽しければ
イベントでいい
食べに来た子どもが友だちを誘ったり、保育園帰りに立ち寄った常連のお母さんがママ友を誘ったりして、要町あさやけ子ども食堂の評判は口コミで広がっている。不登校だった子、親の帰りが遅い子、シングルマザーと赤ちゃんなど、いろんな人がやってくる。名前は書いてもらうが、誰が来てもOK! ただし、大人は子ども食堂の意義を理解してくれる人が条件だ。「ただの安い食堂だと思われたら困るからね。子どもは誰でもいい」と話す。
テレビや雑誌に取り上げられると、支援の輪も広がった。お米が100㎏も送られてきて、他の子ども食堂にも分けている。野菜は西東京市の農園から届き、果物は近所の八百屋さんの提供だ。光熱費は山田さんが負担し、会場費として1回5000円がWAKUWAKUネットワークから支払われる。
手伝うスタッフはコアになるメンバーが八人ほどおり、誰がいつ来るかはわからないものの、うまく運営できている。山田さんの言う、「手伝いに来た人がすることを見つけられるすき間のある仕組み」だから、初めてでも場になじんで、スタッフも次々とやってくる。「みんな、子ども食堂は自分がやっていると思っているよ。主役はスタッフだね」と山田さんは言う。誰かの指示で働くわけでもなく、それぞれが子ども食堂の活動を楽しんでいる。
山田さんも厳しい状況に置かれている子どもたちを支援したいと思っているが、月2回のこの活動で子どもの貧困や孤食の問題は解決できないとも感じている。だから「山田さんにとって子ども食堂とは?」と聞かれると、「イベントです」と答えている。来た人が楽しいと言ってくれるのなら、それでいい。
地域が認める活動に成長
自宅を開放し子ども食堂を始めたときに山田さんが懸念していたことは、ご近所や地元の人のことだ。不特定多数の人が集まる子ども食堂へ、不安や苦情が来たら、継続は難しいと考えていた。しかし、近所に住むおばあさんが「私もいいですか」と食堂に来たり、食材を届けてくれる家もあって、本当にほっとしたそうだ。
2014年の夏、地元の盆踊り大会に行った時、本部席から「山田さんおいでよ」と声がかかった。子どもたちが破ってしまった2階の網戸を修理してくれた建具屋さんだった。自治会長さんなどに「子ども食堂をやっている山田さ
んです」と紹介されると、「テレビで見たよ。ご苦労さんです」と言われた。たくさんの地域の人が知っていてくれるのが初めてわかり、やってきたことが認められ、大きな自信となった。
一人ぼっちで周りから心配されていた山田さんは、たくさんの人に応援されて始めた子ども食堂でエンパワメントした。
「子ども食堂にどんな人が何人来るかとか、子どもたちに何かをしようとか、いろいろ考えなくていいんだと思う」
あさやけ子ども食堂に来る子どもたちは笑顔で元気だし、山田さんもスタッフもみんな楽しく集まってきているからだ。