1.コミュニティファームで自立と自給へ(生活クラブ生協・山梨)
自分たちの地域に、たすけあいの場を
2019年6月、山梨県南巨摩郡富士川町に「またあした富士川」がオープンした。子どもからお年寄り、障がいのある人も、みんなで楽しく健やかに過ごせる「寄り合い所」を目指し、地元の福祉事業所と協力して設立した共生型デイサービスだ。
現在の日本の福祉制度では、年齢や障がいの有無などによって利用者を区分し、保育園、学童保育所、高齢者・障がい者向けデイサービスなどの施設を運営するのが一般的だ。一方、地域には様々な年代や障がいによって多様な支援を必要とする人たちがいる。上野さんは「地域ニーズに即した柔軟な福祉サービスが必要とされていると思います。認知症のおばあちゃんが小さな子どもの着替えを手伝う。そんな光景が日常的に見られる場が理想」と語る。
「またあした富士川」には、生活クラブ山梨の組合員3人も、施設の立ち上げから運営に携わり、今日に至る。スタッフにも利用者にも「また行きたい」と思ってもらえる心地よい施設を目指し、内装に無垢材やコルク材などの自然素材を採用し、食事やそうじには生活クラブの調味料や石けんを使用している。また、デイサービスの施設を利用して、お茶会、ハンドマッサージ、音楽会など、地域の人たちが気軽に集える場づくりにも力を入れてきた。
つながりの根っこは「食」
「またあした富士川」に携わる人たちも、生活クラブ山梨も、子ども食堂を運営したいと考えていた。富士川町からも、「やってほしい」と要望されていた。地域では過疎が進み、孤食になりがちな高齢者も少なくない。そこで、子どもに限定せずに多世代の人たちを対象とする「みんなdeごはん」を企画した。2019年は8月、10月、12月の3回、デイサービスが休業の日曜日に開催。各回20?30人が集い、参加者も一緒に調理し、食卓を囲んだ。
2019年9月から、県内で活動する子ども食堂のネットワーク「やまなし地域こども食堂グループにじいろのわ(以下、にじいろのわ)」に参加し、生活クラブ以外の人たちとの連携も生まれた。山梨県内でも子どもの貧困は顕在化しており、低所得層や一人親家庭などへの支援の必要性が高まっていた。ところが、2020年になると新型コロナウイルスの感染が広がり始め、人が集う企画の開催が難しくなった。コロナ禍は低所得層を直撃し、食の支援がより求められているにもかかわらず、子ども食堂が開催できなくなってしまった。
(p.26-P.28 記事抜粋)