種まき国連総会が「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択(國學院大學教授 古沢 広祐)
*** それでも、今回の「持続可能な開発目標(SDGs)」の本文には「我々は、小規
模企業から多国籍企業、協同組合、市民社会組織などの民間部門の役割を認知する」
という一文が記載され、持続可能な社会を形成するために協同組合の役割が必要である
と明記されました。
近年公開されたデータによれば、貧困問題がなかなか解決しない一方で、富める者はどんどん富んでいくという現在のグローバリゼーションの現実が明らかになっています。そして、世界の国の経済規模(GDP)と企業の営業規模を比較すると、企業の事業高が国家の経済規模を上回るような活動主体になっています。それにも関わらず、労働者への配分は減らされ、企業がさらに競争力を高めるために利潤や資本が蓄積されています。さらなる問題は国境を越える租税逃れ(タックスヘイブン)で、国の財政赤字に迫る金額規模ではないかと批判されています。国際競争の中で企業が生き延びるために、労働者がますます厳しい状況に追い込まれていることは明らかです。
私は、こうした状況の中でこそ、もっとも期待されるのが協同組合セクターだと思います。グローバル競争ではなく、地域を基盤として、持続可能な消費と生産の仕組みを作り、雇用や生活を守ってきた協同組合のこれまでの経験と実績と展開が、これからの社会にはますます重要になると思うからです。
ただし、難しいのは、協同組合といえども、常に資本の競争力と対抗しなければならないことです。協同組合が市場経済に巻き込まれ、対抗的な関係性を築くことに失敗してしまうと、自らが従来の企業的な資本に変質してしまいます。協同組合も、グローバルな競争経済を無視することはできませんが、これまで培ってきた理念、原則、活動形態によって競争経済に対抗していかなければなりません。この困難さゆえに、協同組合はこれまで対抗力を展開しきれずに、残念ながらあまり日の目が見られませんでした。
しかし、「持続可能な開発目標(SDGs)」を通して新しい世界の枠組みが提示された今こそ、協同組合の出番です。協同組合には、既存の経済体制の矛盾に対するオルタナティブとしての役割があると思いますし、現在の矛盾を解きほぐし対抗していく受け皿にもなるでしょう。協同組合がローカルなレベルで作りだしてきたモデルを、グローバルなレベルでもネットワークしていくことで、重要な担い手となることができます。その可能性と意義を示して、世界の変革に向けた現実的なモデルを提示する時代状況が生まれつつあるのです。