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「労働が資本を雇う」―労働者協同組合が創る未来(季刊『社会運動』編集長 白井和宏)

【好評!増刷しました】季刊『社会運動』2021年7月【443号】特集:ワーカーズ・コレクティブ―労働者協同組合法を知る

フランス革命にさかのぼる労働者協同組合

 

 最初の協同組合は1884年にイギリスで設立された「ロッチデール先駆者協同組合」だと言われることが多い。「一人一票による民主的な運営」「購買高に応じた剰余金の分配」など、協同組合原則を築いたことが評価されてきたからだ。
 だが労働者協同組合の歴史はもっと古い。「自由・平等・友愛」を掲げたフランス革命の後、1832年(『レ・ミゼラブル(あゝ無情)』が描いた貧困と革命の時代)には「労働者生産協同組織助成法」が制定され、1849年には「労働者協同組織連合」が結成された(注1)。パリだけでも300の労働者協同組合があったという。
 ロッチデール先駆者協同組合は消費生活協同組合であり、その目的は食品や衣類などの生活必需品をまっとうな価格と品質で販売し、労働者の生活を改善することだった。
 他方、労働者協同組合はより革命的だった。労働者が自らを組織することで、自己の経済的、社会的解放を夢見たのである。

 

「新しい産業革命の先導役をつとめる」

 

 2020年12月に日本でも「労働者協同組合法(ワーカーズ法)」が制定された。コロナ禍にあって、新たな雇用の創出を期待する声が強い。だが労働者協同組合はそれ以上の期待を背負ってきた歴史がある。
 1980年に開催された国際協同組合同盟(ICA)モスクワ大会でも、レイドロー博士はこう主張した。「(産業革命では)資本が労働を雇うようになった。ところが労働者協同組合の場合にはその逆で、労働が資本を雇うことになる。もし大規模にこれが発展すれば、協同組合は、まさに新しい産業革命の先導役をつとめることができる」(注2)
 労働者協同組合がこれからどのような未来を創り出すのかは、その担い手たちが何を期待するのかによって決まる。「夢以外に未来を創り出すものはない」(ヴィクトル・ユーゴー)のだから。

(注1)『フランスの初期社会主義』(河野健二編、平凡社1979)
(注2)『西暦2000年における協同組合』(日本生活協同組合連合会1980)

(p.4-P.5 記事全文)

 

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