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市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

社会的受容性から見た「2050年の先」(名古屋大学大学院環境学研究科教授 丸山康司)

季刊『社会運動』2021年10月発行【444号】特集:再生可能エネルギー――気候危機と生活クラブ

地域住民とともに進めた「庄内・遊佐太陽光発電所」

 

 食料、エネルギー、ケア、教育なども含めて人間が生きていく上で、そして社会を継続するための基本的なニーズは市場原理にさらしてはいけない、という考え方がある。そこにかかわる部分は公共財として支えられるべきだというのが「社会的共通資本」(注)の考え方である。これは、「庄内FEC自給ネットワーク」(34ページ参照)とも共通する。山形県酒田市、遊佐町の庄内エリアは生活クラブ生協の主要な生産地として長年提携関係にある。顔の見える関係を作り出してきたから、産地の持続可能なあり方にも、離れた都市部の組合員がかかわる新たな取り組みが展開できる。エネルギー自給を目指して、生活クラブ生協と提携生産者の共同出資で㈱庄内自然エネルギー発電を設立し、庄内・遊佐太陽光発電所を建設した。建設資金は、地域の金融機関、生活クラブ生協の出資、庄内の市民や生活クラブ生協の組合員が参加する市民ファンドで調達し、地域住民とともに計画を進めた。発電した電気は、㈱生活クラブエナジーを通じて組合員や生産者に届けられている。
 にかほ市の風車も遊佐町の太陽光発電も、単なる購買者ではなく、生産と消費のあり方を考え、産地・生産者とつながろうとしてきた生活クラブ生協の活動の積み重ねの上に生まれた事例だ。

 

そして「2050年の先」を描く

 

 2050年脱炭素化はかなり高いハードルだ。電気だけでなく、熱や交通も含めて現時点で達成できている自治体は農山漁村を含めてほとんどない。脱炭素化を実現するには、再生可能エネルギー導入だけでなく、効率化によって需要そのものを減らすことが必要になる。そのうえで地場産業として再生可能エネルギー事業を位置づけるか、自然環境を生かした観光事業で地域の発展を目指すのかなど、地域の将来像を踏まえた再生可能エネルギーの目標設定が課題になってくる。仮に、自分たちの暮らす地域で再生可能エネルギー100パーセントを達成した後、さらに拡大させるのか、もう十分とするのかは地域の選択になる。
 資源に乏しい都市部は、自分たちの地域だけでは自給できないことを自覚し、社会的受容性のある再生可能エネルギーを推進させることも考える必要がある。こうして資源を枯渇させず、地域間の公正な関係に基づく持続可能な社会を、「2050年の先」として描いていけるのだ。

(p.85-P.86 記事抜粋)

 

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