市民がつくるエネルギーの実践 市民風車の歴史とこれから(北海道グリーンファンド理事長 鈴木 亨)
市民風車建設のノウハウを全国に普及
風力発電事業は、開発から運転開始までのリードタイムが4、5年かかります。現地での風況調査、売電量の予測(事業性評価)、国の認証を得るための基準に適合した風車の構造設計等にも時間を要します。環境アセスメントの調査・予測・評価も必要です。さらに建設後もメンテナンスをし続けないといけません。風力発電事業は時間も費用もかかりますから、市民風車を短い期間に一気に増やすことはできないのです。
北海道グリーンファンドは、市民風車実現の経験を生かし、風車建設のための仕組みやノウハウを、全国の風車建設を目指す市民にどんどん提供してきました。また、風車第一号建設時に設立した、㈱市民風力発電が、現在では各地で地域主導による再エネ事業の開発、風車の運転保守管理、地域活性化の支援を行っています。2003年2月には、「㈱自然エネルギー市民ファンド」を設立し、各地の再エネ事業での市民出資の組成・募集・管理・運営などファイナンスの支援も行っています。ちなみに自然エネルギー市民ファンドでは、風力発電以外の太陽光発電、小水力発電などの市民出資も扱っています。
─北海道グリーンファンドが呼ぶ「市民風車」とは、どういうものを指すのでしょうか。
北海道グリーンファンドでは、㈱市民風力発電などが地域と連携し開発、支援した風車を「市民風車」と呼んでいます。市民風車は、この20年間で38基まで広がりました。このうち22基が市民(個人)出資を募集した風車です。これまで約4400人が約28億円を出資しています。残りの16基は生活クラブ生協など、市民風車の理念に賛同した生協や企業と協働・支援により誕生した風車です。例えば、生活クラブ生協の「夢風」は、建設地の秋田県にかほ市との交流や地域活性化の取り組みを広げるなど、市民風車の理念を体現していると捉えています。
─今後は、市民主体の再生可能エネルギー事業として何を目指すのでしょうか。
食糧自給率200パーセントの北海道は、再エネ資源のポテンシャルも日本一です。エネルギー自給率を300パーセントにも400パーセントにもしていき、エネルギーを本州に輸出するくらいまでにできるでしょう。私は北海道生まれなので、北海道が経済で独立し、スコットランドのような自治権をとるところまで目指したいですね。
いま北海道の寿都町と神恵内村は、高レベル放射性廃棄物処分場の選定調査に手を挙げています。調査に応募すると2年間で最大20億円が国から交付されるからです。でも誰も放射能の施設が欲しいわけではない。つまり地方は財源が欲しいのです。それならば再生可能エネルギーで地域経済を豊かにしようと発想を変えたい。実際ドイツやオーストリアの自治体では、再生可能エネルギー事業を基盤にして公共交通など住民サービスを提供しています。日本でも政策支援さえあれば、それは実現できると思います。
(p.93-P.95 記事抜粋)