②地域分散型エネルギーシステムで再エネ主力化へ(都留文科大学地域社会学科教授 高橋 洋)
集中型システムが招く大規模停電のリスク
─日本の電力システムは、大手電力会社が各地域を担当し、発電から小売まで一貫して行う集中型で独占的なものでした。規制改革の流れで徐々に電力の自由化が進められてきました。2016年の一般消費者向けの電力小売り自由化で、消費者の選択肢が広がり、2020年には、大手電力会社が発電、送電、小売りに分離されました。再生可能エネルギーの導入は大きく進むのでしょうか。
それには、単に火力や原子力を再生可能エネルギーに置き換えていくという話にとどまらず、電力システム全体の構造改革を必要とします。図1のように、集中型を分散型に、独占ベースを競争ベースに変更することです。ところが、現在日本政府がやろうとしているエネルギー転換は、これまでの集中型に近い中途半端なものなのです。
2011年の東京電力福島第一原発事故で、原子力発電には放射線被ばく・汚染の危険性、廃棄物処理などの問題とともに、事故処理の困難さが大きな問題として露呈しました。これら原子力自体の問題以外は電力システムの観点からは、安定供給上の脆弱性が曝け出されました。東日本大震災では、福島第一原発の他にも太平洋沿岸に立地する大規模な火力発電所も被災し、東京電力管内の約35パーセントの電源が一気に失われたのです。集中型電源は一つの規模が大きいからこそ大規模な供給力不足が起き、計画停電という事態を招きました。
さらに地域別独占のシステムでは、市場メカニズムが十分に機能せず、地域間の電力融通も不十分だったため、効果的に需給調整ができなかったわけです。集中型システムは、電力の安定供給にとって必ずしも最適ではなかったことが、判明しました。それから7年後、2018年9月の北海道胆振東部地震では、北海道電力の半分近くの設備容量を持っていた苫東厚真発電所の電源が失われ、北海道全域の停電(ブラックアウト)に陥りました。一方、2019年9月に千葉県を襲った台風15号による広域停電の際には、分散型の太陽光発電などが活躍しました。
(p.129-P.130 記事抜粋)