書評②『「再エネ大国日本」への挑戦』山口 豊著(山と渓谷社 2020)
静かなエネルギー革命を、日本各地で見ていく
生活クラブ生協・千葉 理事長 福住洋美
SDGsや地球温暖化防止の視点で環境省から「地域循環共生圏」という概念が提唱され、地域資源を最大限活用して自立・分散型社会をつくり地域の活力が最大限に発揮される社会を目指すという考え方がいま広まっています。再生可能エネルギー(以下再エネ)を中心とした地域の分散型・循環型社会は人口減少で悩む地方再生の切り札になり、温暖化対策に貢献し、この国のエネルギー自給率を高めることにもなります。この本では、人口減少などで苦しめられながらも、土地の特性を生かした再エネ活用により復活を果たした地域の物語がいくつか紹介されています。
それらの地域にはおだやかで豊かな暮らしがあります。そして、共通点はその土地に昔からありながら忘れられていた自然資源を現代のテクノロジーを駆使して蘇らせているということ。再エネを中心とした「静かなエネルギー革命」が行われているのです。
自然資源に恵まれた日本は、再エネ大国
この本を読んで、印象に残ったものをいくつか紹介します。
一つめは岐阜県・石徹白集落。小水力発電が大きな原動力になり集落が元気になり、新旧住民が一緒になって新しい村の形をつくっています。以下、移住者の言葉です。
「高度成長期まではもっと地域でいろいろまかなう時代だったと思います。不便だけど、生活に工夫があったと思います。経済的な効率を考えると、こういう過疎の集落は価値が低いかもしれないけど、でも集落がなくなるとここの知恵みたいなものも一緒に失われていくので、そういうものは残していきたいなと思ったのです。ここの人たちは身の回りから食べ物を得ているので、自然に対する感謝の気持ちがあったり、先祖に対する感謝の気持ちがあったり、すごくハッとさせられるんですね」
(p.136 記事全文)