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市民セクター政策機構

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協議会①庄内協議会 −「生活クラブの食料基地」の新しい取り組み

【発売中】季刊『社会運動』2022年4月発行【446号】特集:農業危機 -生産する消費者運動

 山形県庄内地域は「生活クラブ生協の食料基地」と呼ばれるほどの一大産地。米や豚肉、地元の食材を生かした漬物など様々な食材を長年にわたって、供給し続け、生活クラブの組合員にとって「食のふるさと」になっている。しかし、日本の多くの生産地と同じように、庄内地域も少子高齢化・生産人口の減少で、生産基盤が揺らいでいる。この課題に取り組むため、庄内地域では2017年にエリア内の13の提携生産者と生活クラブ連合会を構成メンバーに「庄内協議会」を発足させた。
 庄内協議会について語るには、庄内地域と生活クラブの提携の歴史を振り返らなければならない。1971年、米の減反政策に反発し、独自の販売ルートを模索していた旧遊佐町農業協同組合(現JA庄内みどり)と米の流通に参画しようとする生活クラブで取り組んだ「産地指定方式」(注1)による米の直接提携に遡る。
 その後、食品添加物無添加のウインナーに挑戦した太陽食品(現㈱平牧工房)や平田牧場と提携し、1974年には組合員が産地を訪れる「庄内交流会」が始まった。庄内交流会は、山形県内の様々な食材を提供する生産者組織の「山形親生会」と生活クラブ組合員の直接交流の場として継続して開催されてきた。2019年までに延べ1万人以上の組合員が参加し、生産現場を確認するだけではなく、意見交換を重ねて、生産と消費の〝顔の見える〟関係を形作ってきた。

 

庄内FEC自給ネットワークづくり

 

 今回、庄内協議会についての話を聞くために3人の生産者に集まっていただいた。茂木陽一さんは、㈱平田牧場の専務。平田牧場は、豚の繁殖から肥育までの一貫経営、さらには流通・販売まで手がけている。現在は「平牧三元豚」などで全国的に知られている。
 JA庄内みどり・遊佐町共同開発米部会の池田恒紀さんは生活クラブのお米「庄内 遊YOU米」の生産者である。1988年に生活クラブと遊佐町農協は、共同開発米事業に取り組んだ。米の栽培方法、品種の選定、価格の在り方、流通、食べ方などについて生産者と消費者が協議決定するという新しいスタイルの米作りだった。
 そして齋藤享さんは、「赤かぶ漬け」など庄内の特産野菜の加工品を製造している㈲月山農場の代表である。

 

庄内協議会設立の大きな目的は、生活クラブが進めているFEC自給ネットワーク構想(注2)の実現である。「食べる側・生活クラブ組合員」と「作る側・生産者」の関係を転換し、「都市圏の生活者」と「生産圏の生活者」が、双方向の提携で持続可能な産地をつくっていくことを目指している。庄内協議会がまず取り組んだのがF(Food:食料)の分野だ。
 月山農場の先代の社長であった齋藤三郎さん(2020年12月逝去)が中心となって、2018年に国内初の生産者による生協「生活協同組合庄内親生会」を設立した。
 平田牧場の茂木さんは「庄内地域には、生活クラブの消費材(18ページ参照)を利用できる仕組みがありませんでした。生産者も消費者になって、消費材を利用することで良さも足りないものもわかってきます。それを活かして生産者の力を高めていきたいと考えています」と話す。
 E(Energy:エネルギー)では、庄内・遊佐太陽光発電所が2019年に稼働した。その事業収益の一部を庄内地域の福祉事業に還元する仕組みもできあがった。
 続いて、C(Care:福祉)は生活クラブ連合会と酒田市と連携して進めてきた参加型福祉コミュニティの拠点「TOCHITO(とちと)」が2022年度に完成する。生活クラブでは、都市圏の組合員や家族がTOCHITOを利用して、庄内への移住・二拠点生活の計画を進めている。生活クラブと馴染みの深い庄内だから安心だという思いで移住を決めた人もいる。
 庄内協議会は、移住者の日常生活を支援し、仕事やプライベートで活躍できる出番と居場所をネットワークを通じて提供していく予定だ。茂木さんは個々の生産者の仕事に移住者がかかわれる仕組みを考えているという。「生産者は組合員の参画を期待しています。食料基地・庄内の持続に一緒に取り組んでいきたい」と話す。移住や関係人口を増やすことで、生産地の活性化を目指そうというわけだ。

(P.62-P.64記事抜粋)

 

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