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協議会②まるごと栃木生活クラブ提携産地協議会 −地域に根ざして働く人びとを支える仕組みをつくりたい

【発売中】季刊『社会運動』2022年4月発行【446号】特集:農業危機 -生産する消費者運動

 持続可能な畜産や農業を目指し、様々な取り組みを進めている「まるごと栃木生活クラブ提携産地協議会(以下、まるごと栃木)」には、10団体が参加している。生産地が抱える課題を、どう克服したいと考えているか、これまでの試みと今後の可能性について、まるごと栃木事務局長の神山雅如さん(栃木県開拓農業協同組合 営農推進室副室長)に聞いた。

 

目指すのは、耕畜連携による地域循環型農業

 

 まるごと栃木が結成されたのは、2008年。酪農家、肉牛農家、養豚農家、野菜農家、米農家など多彩な生活クラブ生協の生産者6団体と生活クラブ生協・栃木、生活クラブ生協・東京が参加し、横のつながりをつくり、作る手と食べる手が協力して地域課題を解決してゆくために発足した。
 「食料の自給率を上げ、国内での安定供給をはかるために、耕畜連携による地域循環型農業を目指しながら少しずつ歩みを始めました。そのいくつかは生産者の努力だけでなくパートナーの生協組合員さんの後押しもあって、確実に成果をあげています」と神山さん。
 まず力を入れてきたのが、輸入に頼っている畜産飼料を国産化することだ。飼料用米と飼料用稲の生産を行い、養豚と肉牛には、ほぼ普及させることができた。現在では子実トウモロコシの作付け実現に向け生産者、飼料会社などと協議を進めている。
 また、畜産農家から出る堆肥は園芸農家や米農家などが再利用し、また提携酪農家の乳牛から生まれる仔牛を育て、肉牛を生産する「乳肉一貫生産」を行うなど、食にまつわる様々な循環を大切にする農業に取り組んできたのが、まるごと栃木の特長だ。
 このように生産現場での連帯は進んではいるものの、他の産地同様、深刻な働き手や後継者不足の課題を抱えている。また気候問題、東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の影響も深刻だ。最近では新型コロナウイルス感染症拡大の影響もある。常に試練があり、解決しなければならない課題をつきつけられる。
 「2014年に栃木県で開催されたGMOフリーゾーン全国交流集会をまるごと栃木が中心となって運営し、NON-GMO(遺伝子組み換えでない)をアピール、福島県で起きた東電原発事故後には農畜産物への放射能検査を自主的に行い、安全な供給に努めました。さらに再生可能エネルギー政策を進めよう、もっと幅広く共同で社会の問題に向き合い協力していこうという機運が高まっていきました。いろいろな課題への対策を進めることで、まるごと栃木の連帯感はさらに強くなりましたね」
 生活クラブで提唱されてきた「FEC 自給ネットワーク」を軸に、最近では環境省の「ローカルSDGs推進策(地域循環共生圏)」を推進し、「誰一人取り残さない」というSDGsの基本的な考え方を大切に、持続可能な地域社会を実現したいと考えている。

 

農家の後継者というより、地域の後継者

 

 では、これから地域でできることは何だろうか。まるごと栃木では、第3期3カ年活動計画(2022~2024年度)として、食、エネルギー、福祉などについていくつかの具体策を考えている。
・畜産飼料の自給率向上はこれまでも課題になっていたが、一層の国産化を進め、高騰しがちな飼料価格を安定させて耕地の維持に努める。
・エネルギーの自給に引き続き取り組み、太陽光発電所「生活クラブSOLAR栃木発電所」に続く新たな再生可能エネルギーの創出を目指す。営農型ソーラーシェアリングやバイオマス導入を検討する。
・酪農、畜肉、青果物、水稲といった一次産業品に加工食品製造の全農食品㈱が加わった。今後は地域ネットワークを生かした消費材(18ページ参照)の開発をすすめていく。
・地域の行政などとの関係性をつくっていく。学校の職場体験や実習を通じて若い世代にも農業に興味をもってもらい、例えば栃木県立那須拓陽高校では、高校生が栽培した在来種の大豆で作った豆腐や味噌を販売しながら地域の有機農家と交流をはかるイベントが行われているが、さらに結びつきを強めていく。

 

以上が主な内容だ。持続可能な地域づくりのために、まるごと栃木内でのローカルSDGsの学習会を開催し、解決したい課題を共有することも始めている。

(P.71-P.73記事抜粋)

 

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