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北欧のおじさん世代が語るジェンダー平等 (鐙<あぶみ> 麻樹:ジャーナリスト・写真家)

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 「ジェンダー・ギャップ指数2021」によると、日本は153カ国中121位。かたやトップ常連国の北欧は1位アイスランド、2位フィンランド、3位ノルウェー、5位スウェーデンだ。私はノルウェーに2008年に移住してから、オスロ大学では若いパパ学生がベビーカーを押しながらキャンパスを歩き、男性の国会議員が「子どもを幼稚園に迎えに行かないと」とインタビューを早く切り上げるなど、日本では考えられなかった日常生活に飛び込むことになった。どの世代でも、男性は家庭で「妻の手伝いをする」という考え方自体をしていない印象がある。
 ふと、日本では北欧の女性議員や若いパパをメディアで取り上げることはあっても、「おじさん世代」の声を紹介しているものはないことに私は気づいた。そこでノルウェーの「おじさん世代」3人にジェンダー平等について聞いてみた。

 

妻を手伝うのではなく、私たちを手伝う

 

 マルクス・カールマル・ルーヴェイドさんは1959年生まれ。国内50店舗の経営順調な生活用品店「バンダギスシェーデン社」のCEOだ。95%が女性社員という職場の雇われ社長であるマルクスさんは、企業のリーダーとして女性を雇用することを強く意識している。ジェンダー平等の意識は、学校ではなく家庭で育まれたと彼は話す。
 「女性が強い家庭でした。ノルウェーでジェンダー平等の意識を身に着けた男性が多いとしたら、母親の教育の賜物でしょう。自分の責任は自分でとるように母親が息子を育てることには大きな影響力があります。父は漁師で家にいませんでしたが、私の母は料理や掃除を当たり前のように私にさせていました」
 マルクスさんには「妻を『手伝う』」という感覚は一切ないそうだ。
 「結婚した時から、私たちはパートナーとして同等です。互いの得意・不得意で家事を分担。私は『私たち』を手伝っています。妻は料理が好きではないので私の仕事。台所は私の居場所です。もし私が妻を手伝うという感覚で家にいたら、『あなたは家では経営者ではないでしょ』と諭されるでしょうね」

 マルクスさんはノルウェーはまだまだ平等とはいえないと語る。「女性は出産・育児でキャリアが中断され男性の収入を追いかけ続けるループに入ります。家事をしても収入はありません。それを平等とは呼ばないでしょう」と話す。「私は、女性が男性よりも稼ぐことはいいことだと思いますが、そう思わない男性はいますね。女性が稼ぐことは女性の自己肯定感アップにもつながります!」とほほ笑む。
 若い人や女性を積極的に雇用することで自分のポジションが危うくなる、という考えは全くないそうだ。「むしろ女性が私の今の仕事を引き受けてくれることは歓迎です。企業や国の成長にもつながります。十分に稼いできた退職間近な男性がポジションに固執するなら、それは自分のことしか考えていないとしか言いようがありません」
 マルクスさんにはそもそも「高齢な自分がなぜ今さらジェンダー平等の動きに参加するのか」という感覚もない。「だって、孫やひ孫はどうなるのですか。誰もが未来のことを考えるべきだと思います」
 マルクスさんは、日本の男性はもっとリラックスしてもいいと思っている。
「仕事で出会った日本人男性は丁寧に挨拶やお辞儀などをして、その礼儀正しさに驚きましたが、一連の行為で時間がかかっていました。丁寧な名刺交換やネクタイは本当に必要なのでしょうか。ノルウェーではスーツを着るビジネスマンは昔の姿です。男性はもっと自由になっていいと思います」
 「私は自分が完璧だと考えたことは一度もありません。子どものおむつ替えでは、気分が悪くて吐きながらやっていました。シャツにアイロンをかけていましたが、大嫌いでした。でも妻がやってくれるものとも思っていませんでした」

(P.104-P.107 記事抜粋)

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